内容説明
カポーティ、マキナニー、オーネット・コールマン、ベルトリッチ…遥かモロッコから、現代芸術に常に豊かな霊感を送り続けるアメリカ文学界の隠者。80年代に入り、ブームとも言える再評価が行われ、全作品が本国で復刻されたその伝説の作家の代表作にタンジールに赴いた訳者によるインタビュー、評伝を併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
39
ポール・ボウルズの本書も、沼野先生の『亡命文学論』で印象に残った作品。 ボウルズは、なぜニューヨークを捨てて、モロッコのタンジールになど住んだのだろう? この疑問は、インドア派などと言えば聞こえがいいが、早く言えば引きこもりの僕には永遠に分からないのかも知れない。/ 「遠い挿話」や「優雅な獲物」に描かれた残酷さ・野蛮さは、今読むと胸を刺してくる。 それは、今、ロシアのウクライナ侵攻で世界が突きつけられているものだからだ。 カミュの『異邦人』を思わせる世界。 イスラムという他者。→2022/08/17
rosetta
21
1989年刊。元になった短編集がある訳ではなく日本独自の編集。翌90年に映画『シェルタリングスカイ』が公開されるから時期を得た出版だっのだろう。60ページ程の「学ぶべきこの地」の他は断章の寄せ集めのよう。「時に穿つ」も50ページ程あるが内容は短いエピソードの集合であり、これを含めそれ以外の短編はボウルズが創作したものかモロッコの言い伝えを採取したものか判然としない雰囲気。実は若い頃所属していた劇団でこの短編集の何話かを舞台にしたのだった。自分は登場人物二人の「ハイエナ」でコウノトリの役を貰った。2020/05/23
渡邊利道
6
ボウルズの生涯(当時まだ存命中だったが)を概観するような好短編選集。冒頭「遠い挿話」と「優雅な獲物」がそれぞれ同じ物語の型でありながらモロッコへの旅の前と後に書かれたと言うのは驚かされる。モロッコに取材した寓話的掌編をはさみ、晩年の、これまでの作品の変容の主題を裏返して「帰還の困難」から「帰還の意味の喪失」へと至る中篇「学ぶべきこの地」モロッコの歴史を断章や詩を含めた多声的な形式に描く「時を穿つ」の技術的洗練と達成は見事なもの。2017/03/02
Mark.jr
3
モロッコという、西欧とアフリカとイスラム教に挟まれた場所でしか書きえなかった小説たち。2019/12/18
junne
3
モロッコ旅行に向けてまずは読むならボウルズだろうと手にとってみたものの、なんか盗賊にさらわれるとかそんな話ばっかで不安になってきました……2016/06/06
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