内容説明
厳格な規律の裏では腕力と狡猾がものを言う、弱肉強食の寄宿生活。首都リマの士官学校を舞台に、ペルー各地から入学してきた白人、黒人、混血児、都会っ子、山育ち、人種も階層もさまざまな一群の少年たち=犬っころどもの抵抗と挫折を重層的に描き、残酷で偽善的な現代社会の堕落と腐敗を圧倒的な筆力で告発する。’63年発表。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
105
ガッツリとリョサを読んだ。そしてガシッと掴まれた。ペルーの士官学校での寄宿生活を送る少年たちの話だ。彼らを粗暴だの悪辣だの繊細だの単語だけでは言い表せられない。リョサが文章に文章を重ねて紡いで、あいつらが浮かび上がってくる。あいつらは犬っころなんだ。ギャンギャンと吠えて粗相だってするさ。だが、無力なんだ。脚を折られても裏切られても世に対して無力だ。でもだからこそ愛すべき犬っころなんだ。アルベルトもあいつもあの頃に感じた気持ちは幻じゃなくあの現実を生きたってことを思い返せる。もう振り返れない奴の分も含めて。2021/08/20
中玉ケビン砂糖
64
久しぶりに「世界文学」の気分。バルガス・リョサの実質的デビュー作にして、最初の刊行は1963年なので『百年の孤独』よりも前。いわば「ラテンアメリカ文学ブーム」の草分け的存在。魔術的リアリズム、目まぐるしい時間操作や文体・視点の変転、とんでもない死生観や祝祭感などの破格さにマニアはことごとく魅了された。他方で、それがもともとは辣腕出版人が山師的な意図で仕掛けた世紀の賭けだったとしても、皆が「凄い!」と唸ってハッピーになったのならそれはそれで結果オーライなのか2022/03/05
Vakira
57
リョサをこの世に知らしめた士官学校の寄宿青春物語。リョサ初期作品らしいがこのころから小説の構成技法に挑戦し、物語の進行は面白い。特にラスト数ページのエピローグには驚かされた。登場人物は15歳、士官学校4年生の少年たち。ここまでハードではないが、学生時代の部活の帰りに電車で先輩と一緒になったりすると車中の女性を探して「あの娘ナンパして来い!」なんてやらされた経験あり、運動部の上下関係の記憶が懐かしい。どこの世界も青春時代は似たようなもんだなぁ。誰が早く行くか競争はしなかったが、飛ばしっこ競争はあった。2015/05/17
ロア
53
「今日はここまでにしよう。いやもう少しだけ読んでから…ここまで読んだら絶対止めよう!」などと。。。毎晩区切りをつけて、自分を律しながらでないと際限無くいつまでも読み続けてしまう…そんな麻薬本‼︎ダイナミックで瑞々しい、ほとばしる言葉の渦に飲み込まれる心地良さを知ってしまいました♡(*ノдノ)2017/07/16
seacalf
51
彼らのドクンドクンと鳴る胸の鼓動と荒い息遣いがリアルに伝わってくる。あの世代特有の有り余った感情の迸りが見事に描かれているので、緊張感や高揚感が乗り移ってくる。複数の語り手が順不同に現れたり、回想シーンがちょくちょく挟み込まれて沢山の層が折り重なるような構成だが、丹念に描かれているので引きずり込まれるように読める。それはまさにリョサの思惑通りに。それにしても10代で読んだら、とてつもなく面白かっただろうな。ちょっとした仕掛けが施してあるので、ネタバレな解説は読まずに手に取るべし。夢中になること間違いなし。2017/08/25