出版社内容情報
この島で、母の死を癒してくれる男に抱かれたい。束の間、夫を忘れて。音楽家の優しい夫と、二人の子宝にもめぐまれ何不自由ない結婚生活をおくるアナ。毎年、母親が埋葬されているカリブ海の島へ出かけるアナだが、人知れず、現地の男と一夜限りの関係を結ぶことを心待ちにしていた。刹那的な関係に心身を燃やすアナが出会った男たちとは――。ノーベル文学賞作家が最期まで情熱を注いだ未完の傑作。
内容説明
アナ・マグダレーナ・バッハ、四十六歳。飽きることなく求めあう指揮者の夫との間に、子どもが二人。満ち足りた暮らしにもかかわらず、アナは毎年八月の母親の命日に訪れるカリブ海の島で、一夜限りの男を探さずにはいられない。「人には、公の生活、私的な生活、そして秘密の生活がある」そう語ったマルケスが肉迫した、ひとりの女の、誰にも知られてはいけない「秘密の生活」とは―。肉体のなかでぶつかり溶けあう生と死。圧巻のラストに息をのむ、ノーベル文学賞作家が最後まで情熱を注いだ未完の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
J D
59
「百年の孤独」が文庫化されたようでなぜか最近注目を浴びていたガルシア・マルケス。そんなだったかなぁ?と思い、彼の最後の作品と言われる本作を読んでみた。出会いは夏なのは分かるがだからどうしたと思った。性に開放的な感じなんだか馴染めない。2024/09/16
アーちゃん
54
ガルシア=マルケスが認知症によって執筆できなくなる直前の時期に書いていた未完成の遺作。ただ結末はあるので、作品の肉付けや修正が不完全なまま著者によりボツになった一作だとの事。ガボの息子たちによる「はじめに」、本編あとの写真つき「オリジナル原稿」と「編者付記」、「訳者あとがき」と全て一読の価値あり。音楽家の夫と二人の子供を持つアナ・マグダレーナ・バッハは毎年八月に母の墓のある島に訪れるが、四十六歳の年に一夜限りの相手とベッドを共にする。五十歳までの全六章、カリブの島を味わうように読了。2024/06/13
ヘラジカ
46
生前に作者が「完成」と認めて自らが世に出していないものを読んで良いのかという葛藤は常にある。読書という行為のエゴチズムを考えずにはいられない。なので、想像していたよりもはるかに楽しい読書だったとは言え、小説内容に関する感想は差し控えたい。後書きでも示唆されていた通り、これはガルシア=マルケスの作品というよりも、かの大作家の創作が(それも晩年の)如何なるものだったかを知るための書なのだと勝手に納得することにした。でも読めて良かった。もっとこの作家を読み込んで知りたいと思えた。2024/04/01
蘭奢待
39
ガルシア・マルケスらしからぬ作品。だけあって、ややこしい人名も出て来ず、時代背景も現代的で、読みやすいが、が、が。2024/06/17
マリリン
36
既読の著者の作品を想うと、本作はどことはなく静謐感が漂う男女のめぐり逢いと性。過去を手繰り寄せ現実を織り交ぜたような感覚に陥る。ボレロで奏でる「月の光」が、作品に色どりを添える。主人公の女性の名前も。華やかさよりやや陰鬱な感の中にあるぬくもりから著者の年輪を感じた。ラテンアメリカの熱を帯びた作風は変わらないけど。 そういえば、人生の転換期となるような出会いはいつも8月だった。人だけではない。音楽との出会いも。2024/07/30