内容説明
町中の誰もが、充分に知っていた。しかも誰もが、他ならぬ犯人たちでさえ、なんとしても阻もうとしていたのだ。その朝、彼が滅多切りにされることを。ただ一人、当の彼だけを除く、誰もが…。運命という現実。その量り知れぬ糸模様の全貌に挑む、熟成の中篇。さらには、人生という日々の奇蹟。その閃光を、異郷に置かれた人間の心に映し出す、鮮烈な十二の短篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちてん
37
<マルケス&リョサ祭イベント参加>「十二の遍歴の物語」のみ読んだ。十二人のラテンアメリカンが異国の地で醸す十二の短編。ゆらゆらと虚の泡沫が浮かび流れる中に巻き込まれる強さが皮肉な笑いを呼ぶ。虚しくても歩く、歩き続けることが人生だから。楽天的であり深穴のように暗黒。全編を通して私が感じたイメージ。もっと具体的で的確な感想を書きたいが、自らのラテンアメリカに対する無知がもどかしい。翻訳もこなれていて難解な作品ではないのに。2014/08/11
ホームズ
23
『予告された殺人の記録』は新潮文庫で読んだことがある作品ですがやはり面白かった。どんどん読んでいける作品で楽しめた。『十二の遍歴の物語』はどの作品もそれぞれに違った感じで良かった。全体的に雰囲気がいい感じで心地よい感じ読書ができた(笑) 2013/02/24
ネムル
18
『予告された殺人の記録』は再読、中編小説の最高峰。濃密さよりも、ストイックな文体と構成で読ませる合本は、ガルシア・マルケスの入門書といったところか。「光は水のよう」(タイトルがまたいい)、「聖女」「眠れる美女の飛行」「雪の上に落ちたお前の血の跡」が好き。特に最後のは泣けて仕方ない。2014/09/07
マリカ
17
ヨーロッパ各地を舞台にした「十二の遍歴の物語」はどれもよかったです。「予告された殺人の記録」の衝撃のラストシーンの後だと、短編の軽快さが際立っている気がします。12の短編の中でも「光は水のよう」が特にステキだなと思いました。子供たちが主人公のわずか5ページの短いお話ですが、私の中の「子供」の夢の1つがかなえられたような気がして、なんだかうれしかったのだと思います。2012/01/15
清少納言
15
緻密な構成、豊かな語彙と表現は、読み手を飽きさせることを知らない。普段、日本文学ばかり読んでいるため、新鮮だった。「予告された殺人の記録」は、人物相関図を書き、読み返しつつ、整理しながら読むことに努めた。私のなかで、完全に映像化され、一つの映画を見た気分だ。「十二の遍歴の物語」は、短篇でこそ発揮される作家の力量を見た。死にまつわる話だが、決して重苦しくない。背筋が凍る話や、ボリス・ヴィアンを彷彿とさせる話。この独特の読後感、これがノーベル文学賞作家か。2014/07/21