出版社内容情報
その学園は偽善と倒錯のるつぼだった。障害児学校の新任教師が見た真実とは?韓国社会慄然の性虐待事件を描く衝撃作。今夏映画公開!
この小説が、韓国社会を震わせた。現実の性虐待事件を描く戦慄のベストセラー! その学園は、偽善と倒錯のるつぼだった――障害児学校に赴任した若き教師カン・インホが見たのは、想像を絶する光景だった。無垢な生徒を次々に襲う残虐な魔手。告発に立ち上がったインホたちを阻む権力の壁。子どもたちに救いの日は来るのか?韓国の警察、政治をも動かした衝撃のサスペンス。
内容説明
霧が立ちこめる街・霧津市の障害児学校に赴任した若き教師カン・インホは、信じ難い現実に直面する。無力な生徒をなぶる、鬼畜のごとき「教育者」たち。告発に立ち上がったインホたちを阻む「権力」の壁。果たして、子どもたちに救いの日は来るのか―。社会派作家・孔枝泳の渾身作。
著者等紹介
孔枝泳[コンジヨン]
1963年、ソウル市生まれ。延世大学英文科卒。出版社勤務、大学院を経て、労働運動に飛び込む。1988年、短篇小説『日の上る夜明け』でデビュー以来、韓国で若い女性の圧倒的支持を得る人気作家
蓮池薫[ハスイケカオル]
1957年、新潟県生まれ。中央大学法学部在学中に拉致され24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされる。現在、新潟産業大学経済学部専任講師。2009年、『半島へ、ふたたび』で新潮ドキュメント賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おたま
54
架空の都市、霧津(ムジン)市で起こった事件を追いかけていく物語。霧津市にある聴覚障害者学校・慈愛学院では、児童に対して、校長や行政室長、生活指導教師による性的な暴行が行われていた。それを着任した新任教員のカン・インホが、児童から少しずつ聴き出して、行われていたことの実態が次第に明らかになる。そこに霧津人権運動センターのソ・ユジンも加わり、聴覚障害者の人権問題として裁判に訴えることになる。そこから霧津市全体が狂乱のるつぼ(도가니=トガニ)と化していく。2024/12/19
二戸・カルピンチョ
38
霧が、悪意を象徴する霧が、ずっと物語に立ち込めていて、私は目を凝らし何度も進む方向を確かめながら道を進んだ。手を四方に動かしながら、正義の登場人物の心に触れて確かめたかった。この物語の中では結べなかった正義の結末が、この小説の発する力によって、どうにか納得できる法案として現実世界で可決されたことに、口を真一文字にして微かに頷く。今年読んだ本で一番。2018/10/07
ニコン
25
「霧はすべての人と人の間に入り込み、至近距離にいてもたがいを遮断してしまう。」そんな霧が多い町が舞台の小説。霧のように重い雰囲気が漂う。実在した話を小説化したものである。涙した。衝撃を受けた。2012/07/15
レア
21
心が締め付けられる。あまりにも不条理な事だらけで、こんな事があっていいのかこんな事が赦されていいのか。しかも実話とは。拉致被害者の蓮池薫さんの訳がとても読みやすくてダイレクトに心に響いた。最初に子どもたちの両目を見て向き合ってくれたインホは最後まで頑張れなかったけど、だからこそユジンの「この世のなかを変えたいなんて気持ちは父親がなくなったときにもう捨ててしまいました。わたしは、ただ自分が変えられないようにするために戦っているんです」って言葉が印象的だった。2025/02/18
みんと
19
時、場所を問わず、弱者は権力に抗うすべも知らずに理不尽な扱いを受ける。 日本でも、ここまで酷くはないが老人介護施設や障害者施設での虐待のニュースなどを目にすると辛い気持ちになるが、このようなことがいつまで経っても無くならならないことに怒りを覚える。 ここでの主人公のカン・インホのような勇気ある人が増えればとも思うが、誰にも守らなくてはならない家庭や生活があり、それを壊してしまうかもしれないリスクを背負ってまで闘うのは難しいのだろうか。2013/03/09