内容説明
ナチスに蹂躙されたポーランドを離れ、ニューヨークでひっそりと暮らすレオは80歳。だが、彼が60年前に書いた小説も人知れず海を渡って生き延び、幾多の人生を塗り替えていた。その小説の登場人物に因んで名づけられたアルマは14歳。夢見がちな彼女は、母に宛てられた手紙を覗き、小説に登場するアルマはいまなお存在すると信じ込む。自分の名の由来を突き止め、母や弟を救うための冒険は、彼女をどこに導くのか―。
著者等紹介
クラウス,ニコール[クラウス,ニコール][Krauss,Nicole]
1974年、ニューヨーク生れ。スタンフォード大学卒業後に渡英し、オックスフォード大学・ロンドン大学にて学位取得。2003年、処女長篇『2/3の不在』がロサンジェルス・タイムズの“ブック・オブ・ザ・イヤー”に選ばれ、一躍全米の注目を浴びる。ブルックリン在住
村松潔[ムラマツキヨシ]
1946年東京生れ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南雲吾朗
64
「愛の歴史」というタイトルから恋愛小説だろうと、なめていた自分が恥ずかしい。本当に素晴らしい小説。いつまでも、大事に手元において、何度も読み返したい本。とにかく愛に溢れている。家族、友人、恋人、亡くなった夫、他人、すべての愛に溢れている。書かれている表現も、言葉の選び方も素晴らしい。”母はわたしの父を選び、その感情を手放すまいとして、世界を犠牲にしてしまったのだ。” 愛は常に哀しみを伴う。この本が凄く称賛されている理由が、読んで初めて分かった。胸を張って、他人に薦めれられる本に久しぶりに出会った。2020/11/16
天の川
54
読み終わった後、もう一度読まずにはいられなかった。遠い昔にアルマという少女を愛したポーランドからのユダヤ系移民の老人。「愛の歴史」という本の主人公アルマから名づけられたユダヤ系?の少女。戦争中の迫害による様々な別離と「愛の歴史」の出版の真実。南米チリで出版され、ほとんど誰にも読まれることのなかった「愛の歴史」という小説が半世紀以上を経て、途切れてしまったつながりが再び結びあわされていく。公園での老人と少女のやりとりに涙が出そうになった。優しくて哀しくて…愛しい物語だった。2021/01/09
ぶんこ
34
読み続けられるか不安になり、皆様の素敵な感想を拝見して、再度読み始めたのですが、無理でした。嫌な文体でも無く、翻訳も素晴らしいのですが、とりとめのない感じが今の私には合わないようです。一度図書館に返却して、心が落ち着いた時に読んでみようと思っています。2021/05/19
スミス市松
12
ナチスに蹂躙された祖国を離れNYで暮らすユダヤ系移民の老人レオ・グルスキ、『愛の歴史』の著者リトヴィノフ、そしてその小説にちなんで名づけられた少女アルマ。三者三様の愛の行方が『愛の歴史』によって徐々に手繰り寄せられ、一つの大きなうねりになっていく構造はたいへんお上手にできているのだが、反面どの人物もぼんやりしていて最初から『愛の歴史』ありきで書かれているような感じに終始馴染めず、特に感慨もなく読み終えてしまった。同様のテーマなら小品ながらパヴィチの『風の裏側』の方が書き手の筆致がきめ細やかで面白く読めた。2012/05/04
ボーダレス
10
80歳の老人レオが60年前に書いて日の目を見なかった小説「ヒストリー・オブ・ラブ」。ひょんなことから、それを読むことになった14歳の少女アルマ。何故か、その小説にはアルマという少女が登場する。生まれた瞬間から人は死に向かって歩き出す。その中で出会える数少ない奇跡は、いくつ あるのだろうか。本が持つ言葉の不思議な力によって失われた時間軸が何気なく交差し輝きだす。それがヒストリー・オブ・ラブ…。2018/11/14