出版社内容情報
「早熟の天才」と恐れられた作家のデビュー前の才気が迸る! 16歳頃から青年期にかけて執筆された14篇を収録。解説・村上春樹。
内容説明
「早熟の天才」はこうして誕生した。グレニッチ高校の文芸誌に掲載された7作を含む、思春期から二十代はじめにかけて執筆された未発表作品14篇をセレクト。出自を隠して白人学校に通う少女、死を目前にした孤独な老婆―社会の外縁に住まう者たちに共感を寄せ、明晰な文章に磨きをかけていく。若き作家の輝きに触れる貴重な短篇集。
著者等紹介
カポーティ,トルーマン[カポーティ,トルーマン] [Capote,Truman]
1924年、ニューオリンズ生まれ。19歳のときに執筆した「ミリアム」でO・ヘンリ賞を受賞。’48年『遠い声 遠い部屋』を刊行し、「早熟の天才」と絶賛を浴びる。晩年はアルコールと薬物中毒に苦しみ、’84年に死去
小川高義[オガワタカヨシ]
1956年、神奈川県生まれ。東京工業大学名誉教授。翻訳家。訳書多数。著書に『翻訳の秘密』(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
145
カポーティ10代の未発表作品。訳者の努力が付加価値を付けた珠玉の短編集。『ミス・ベル・ランキン』老女の描写に目頭が熱くなる。『別れる道』最後の握手に嘆息。『これはジェイミーに』犬と女性を通じてのジェイミーへの憧憬~彼は笑って振り向き ミス・ジェリーの方へ駆け出した 思いきり走っていたら ふと若い木の枝になって風にしなっている気がした 『西行車線』...ひとりが窓に寄ってブラインドをあげた かくして太陽が迎えられ、どっと流れ込んできた。 数頁分の村上春樹と訳者後書きで十分。アメリカ人二人の文章は余計かな。2019/04/25
りつこ
43
カポーティ20代の頃の習作集ということで、全体的に物足りない?という感じも否めないが、原石を見せてもらった感の方が強くて、こういう作品を出版してもらえるのはファンにはありがたい。こんな風に物語が次々湧き出てきて書かずにはいられない人だったのだなぁと感じたし、唐突に終わったように感じた作品が後になって絵が浮かんできたり記憶に残っていたりして、やはりすごい物語力だな、と思う。2019/04/17
yumiha
42
カポーティ作品は、切なさという余韻がいつも残る。心の奥底に他者と折り合えないものがあったからだろう。さて、本書はそんなカポーティが十代で書いた14篇をまとめた短篇集。10ページ前後のほんの短い作品ばかりなのだが、まぎれもなくカポーティだった。たとえば「火中の蛾」のエムの「寂しく生まれついたのだ」という諦観など、カポーティ自身が自分にそう言い聞かせて寂しく笑う姿が見えるようだ。 2023/02/26
livre_film2020
37
カポーティ初読。さらさら読める短編集。幻想的でありつつ少しホラー。人間の揺れ動く感情をよく表している。例えば、恋愛感情、嫉妬、生への固執、懐古主義など。サリンジャーよりは格式高いような印象を受けたが、これを10代から20代にかけて書いたとは。村上春樹が天才と称するのも納得。習作なため、話が突然終わることが多々あるが、それが余韻となってよい雰囲気を醸し出している。『ティファニーで朝食を』は映画を観たことがあるが、好きになれなかった。しかし、原作は違うらしいのでぜひ読んでみたい。他の傑作も手に取ろうと思う。2022/10/15
kazi
35
表紙のデザインが良い感じだったので衝動買いしちゃいました。実は「冷血」以外読んだことないんだけど、これは熱心なカポーティファン向けのレア・トラック集って感じの作品だよなあ(^^; グレニッチ高校時代から二十代初めまでの、ニューヨークの公共図書館が所蔵する未発表作品14篇という事なので、本当にデビュー前の習作といった感じです。一遍一遍が非常に短くてスラスラ読めた。若くてもさすがカポーティ。未発表にしておくには惜しいと思わせるだけの質がある。まだ熟していない若いワインって感じ。瑞々しい。才能ってすごい。2021/06/01