出版社内容情報
神童・カポーティの名作が、村上春樹の新訳で甦った!
内容説明
ホリーは朝のシリアルのように健康で、石鹸やレモンのように清潔、そして少しあやしい、16歳にも30歳にも見える、自由奔放で不思議なヒロイン。―第二次世界大戦下のニューヨークを舞台に、神童・カポーティが精魂を傾け、無垢の世界との訣別を果たした名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mukimi
149
取り戻せない若さ、過ぎ去って行く幸福な記憶、変化する人の心…限りある人生の中の「うつろい」の輝きを讃える作品達。物悲しさや淋しさの上に人生の美しさを浮かび上がらせる感性は、無常を愛する日本人と共通するように思えた。そんな「うつろい」を跳ね飛ばすかのように奔放に刹那的に生きるホリーは歴史に残る名ヒロインだと思う。オードリーヘップバーンはホリーではないという批評は有名だが、映画だけで満足せず原作を読んでよかった。こんな情緒的な作品が20世紀初頭のアメリカにあったことを知れて、心の世界が一回り広がった気分。2021/08/28
抹茶モナカ
90
イノセンスをテーマにした中篇小説である表題作、その他短編小説3作収録。表題作は良かったけれど、短編小説の方は文章が繊細なのは伝わるけど、好みではなかった。発売当時に購入して、読まずに7年経ってしまったけど、手にとった。圧倒的に表題作が良かったので、一緒に収録された短編小説が霞んだのかな。表題作以外は、一応読めたのだけど、解説を読んで、腹におさまった感じ。2015/04/28
nakanaka
81
だいぶ前に映画を観ていますが、原作はかなり異なる印象でした。翻訳者でもある村上春樹の解説にもあるように、オードリー・ヘプバーンやジョージ・ペパードの配役は合っていないように感じます。奔放な性格のホリー・ゴライトリーと彼女を取り巻く男たちの話なわけですが、振り回され続ける男たちには正直共感できませんでした。それでもエンディングは感動できるものでした。他にも三編の短編が収録されていますが、どれも素晴らしい。個人的には短編の方が感動的で面白かったです。2019/09/23
harass
80
この著者のこの有名な中編小説は持って無かったので借りる。『映画原作派のためのアダプテーション入門』で出てきて気になっていた。カポーティ自身のシナリオは没になったとか。作家志望の主人公と同じマンションの不思議な女性ホリーとの話。読中ホリーが実に難しい役やなあというのと、このおしゃれ感と奔放さとさりげなさは今でも色あせないと感じつつ読む。まあ映画はまだみてないんですけども。2018/03/30
まつこ
80
著書・翻訳書合わせても初めて村上春樹さんの文章を読みました。想像していた『ティファニーで朝食を』ではなかったけれども楽しく読めました。オードリー・ヘップバーンではないですね。奔放すぎる! この本には他の短編も収められていて、そっちの短編の方が好み。というかトルーマン・カポーティのストーリーを長く読んでいられない。表現が面白い分、過食で頭が追いていかなくなる。まだまだ修行が足りません。2013/11/24