内容説明
裕福な家に生まれるも父の死によって急転し、カトリック修道院に預けられた少年時代。神父への道を約束されながら、学問の道を選んだ青年期。大学時代の恩師の言葉“それをやらなければ、生きてはいけないテーマ”を胸に、ヨーロッパ中世の仄暗い森へと分け入ったドイツ留学時代―。日本人の生き方の問題、そして転換期の国立大学が直面した諸問題にも真摯に取り組んだ、一人の自立した学者の、揺るぎない人生の軌跡。
目次
神田の頃
鎌倉の暮らし
小学校にて
川越への疎開と敗戦
牛込にて
カトリックの修道院にて
洗礼
帰京
はじめての山
大学入学〔ほか〕
著者等紹介
阿部謹也[アベキンヤ]
1935年東京都生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。ドイツ中世史、西洋社会史研究の第一人者。前一橋大学長。一橋大学名誉教授。著書に『中世の窓から』(大仏次郎賞受賞 朝日選書)などがある
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感想・レビュー
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紙狸
17
2005年刊行。『ハーメルンの笛吹き男』や「世間」論で知られる歴史家の自伝。1935年生まれ、幼くして父親を失い、中学生の頃、修道院が経営する施設に入る。カトリックの洗礼を受けた。多感な年頃に日本にいながらヨーロッパを体験した訳だ。偶然、修道女の告解のためのメモを読んでしまったエピソードは、のちの著者の学問にもかかわりがあるはずだ。ただ不思議なことに、自身の成人してからの信仰についての記述は見当たらない。研究の話に加え、大学運営や学者同士の人間関係に重点が置かれる。これも「世間」論だと意識していた。2022/02/20
tom
6
阿部謹也は、もう亡くなってしまったけれど、「ハーメルンの笛吹き男」を読んで以来、ずっと気にしている学者。捨てずに置いていたこの本を久しぶりに取り出してきて再読。この人の書く中世ヨーロッパの世界は、とても面白いのだけど、この本は、彼がほんとうにコツコツと事実を集め、その中から見えてくる世界をどういう風に解読して行ったのかを垣間見せてくれる。良書です。もっとも、大学の機構改革の部分は、興味がないからパス。面白げな本をもう一度再読してみる気になりました。2013/07/09
にきゅ
0
何冊か著作を大昔に読んだひとの自伝。個人の記録、大切。世間とはなんでありましょうか。その研究をしないと、生きていけない。そんな研究見つかるだろうか。2015/11/30
yuri9976
0
ダ・ヴィンチで誰か(忘れた)が推薦していたので読んでみた。一橋大学名誉教授で、ドイツ中世史を専攻する著者が職業としての学問や、なぜドイツ中世史を研究するに至ったかについてを語る。研究者として生きることは、その研究を通じて世界に触れることで、その方法が当人にとって一番よい生き方なんだろうな~と思った。 ちょうど私が小平に住んでいた頃に、一橋大学の学長をしていたことと、山が好きなこと、詩が好きなことに共感を抱いた。 この人といっぺんお話をしてみたいわ~。2013/04/06
モムゼン
0
大学図書館でさらりと読む。読み易い体裁の本だ。 筆者の内なる力強さと温かさ、加えて彼の慧眼や体験に触れることができる。