出版社内容情報
日米開戦前夜、京大の哲学教授はいかにしてエリート学生を洗脳し、戦地へ送ったのか? 悪魔の講義の構造を解明する合宿講座全記録。
内容説明
「悠久の大義のために死ねば、永遠に生きられる」。日米開戦前夜、京都帝国大学教授・田辺元の講義録『歴史的現実』は戦地へ赴く若者のバイブルとなった。戦後ずっと口を拭った田辺の矛盾と欺瞞を探り当て、“戦前回帰”の進む現代に警鐘を鳴らす佐藤優の合宿講座完全収録。
目次
1 金曜夜 歴史という制約
2 土曜朝 過去の必然性と未来の可能性
3 土曜午後1 国策映画『敵機空襲』を観る
4 土曜午後2 個人・種族・人類
5 土曜夕方 歴史的人間になれ
6 土曜夜 「死に於て生きる」
7 日曜朝 亜周辺の帝国で
著者等紹介
佐藤優[サトウマサル]
1960(昭和35)年生れ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英大使館、在露大使館などを経て、1995(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月に背任容疑で、同7月に偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受けた。同年『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。主な著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)、などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
106
学生たちに国のために死ぬことを求めたとされる田邊元先生の京都帝大での講義「歴史的現実」(1940年)の全文を、佐藤さんと一緒に読合わせるという重い一冊。「歴史的現実」は、過去・現在・未来と個人・種族・人類を、三位一体的構造のアナロジーとして論じるなど、歴史や個人に対する考察が殆どで、最後の章で急に「歴史的人間たれ」として国家や種族を持ち出すという余りにも乱暴な論理展開。決して、ここまでして解読する必要がある文章にも思えず、今一つ納得できないまま読了する。田邊哲学の一面だけを切り出したような危うさを感じる。2022/10/13
harass
72
発作的に借りてしまい、途中から流す。哲学者田辺元が1940年に出した岩波の小冊子を解説する講義。佐藤によると田辺のこの講義録はベストセラーになり、学生たちに国のために死ぬためをすすめていて、その論理展開や思想的裏付けの種明かしや詐術を批判的に解説。また当時のプロパガンダ映画を上映し当時の一般生活と意識を探る。批判的読み方でいくつかためになったのは確かなのだが、合宿講義の書き起こしで、実にくだけたところが目立つ。ライブ感を大切にしているのか、と考えるが…… やや気になるのはこの著者を信頼してないせいもある。2018/07/31
キク
66
佐藤優でこのタイトルだと、素通りはできなかった。戦中の京都大学で若者を戦地に送り出す哲学的根拠を語っていた田辺の理論を噛み砕いていく。「生きることは死ぬことだ」とか「悠久の大義に殉じた者は永遠に生きる」とかの耳障りはいいけど、こういうこと言う人って、絶対に自分が前線に立たないこと前提で言ってるよな、的なやつ。今回のウクライナ騒動でも、興奮した政治家が何人か訳わかんないこと言い出してた。この状況で興奮する政治家は信じちゃダメだと思う。非核三原則についてこのタイミングであーだこーだ言い出すセンスが本当にイヤだ2022/03/15
おさむ
44
京都大学で西田幾多郎とともに「京都学派」の基礎を築いた田辺元(はじめ)が時の学生を戦地へ送るために著した歴史的現実を読んで解説する新潮社の講座をまとめたもの。ナマの佐藤さんの講演を聞いたことがあるが、早口で博覧強記なのでもう聞き取るのがやっとでした。そういう意味ではこの講座に参加された人は皆頭の良い方だと思います笑。悪意に満ちた知的操作、人を引き込むロジックとレトリックには空恐ろしくなります。いかに我々が国家に騙されないようにするか。思想的耐性をつけていくしかない、という佐藤さんの言葉に首肯します。2017/11/08
キョートマン
22
田辺元をめちゃくちゃ悪様に書いている。戦争前・戦争中のぴりぴりしていた時期に公にされた文章って、どれくらい本音が語られているんだろうか。たぶん時局によって書かされた部分も多い気がする。だからといって仕方がないとは言えないかもしれないけど、田辺を極悪人のように語ることには違和感がある。2021/06/07
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