内容説明
わずか18の詩篇だけを積んだ『孔雀船』を残して、明治の詩壇から消え去った清白。捨てられた多数の詩と厖大な日記を読み解き、ゆかりの地を歩きながら辿るその峻烈な生涯の謎。
目次
月光抄(小浜の家;鎮西丸;旋光;淡路を過ぎて;幻華と爽朗 ほか)
日光抄(細菌検査所;山阿海陬;壊れ荷;月姫;書評 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
17
主に明治三十年代に隆盛を見せた新体詩の流れにおいて、当代の最高峰たる詩集『孔雀船』一冊のみを残して詩を廃した詩人・伊良子清白の評伝。著者の綿密な調査と精確な批評からなる本書は、当時の新体詩から口語自由詩に移行する激動の時代を生きた文士たちの群像、そして清白の詩品についての良質な読解書としての側面ももつ。上巻「月光抄」では清白の詩人としての歩みが語られる。浪費癖の父により傾いた家計を若くして背負い、生命保険会社の診査医として各地を巡るこの貧しい詩人にあっては、「生計の旅」と「風雅の旅」は常に分裂していた。2021/02/19
moonanddai
6
韻文はからっきしの私のジャケ買いW。渋いといか、おしゃれな本です。内容は、今では全く忘れられてしまった感じの詩人、伊良子清白の評伝。彼の活躍した明治末期は、詩の世界では文語定型詩から口語自由詩への過渡期に当たり、詩を書く人たちの人間関係というか確執みたいなもので「詩」の世界は動いていったようです。ある意味「断絶」の時期。そんな中で1冊の詩集のみを残した人とのこと。韻文音痴かつ文語ダメの私としては、とっつきにくかったのですが、読むにつれて「味」というか「美しさ」みたいなものがにじみだすのが感じられました。2021/07/10
Takashi Hamasaki
0
もっとも大事な本。
Tonex
0
伊良子清白という忘れられたマイナーな詩人の人生と作品を丁寧に追った良書。2013/08/31