内容説明
藍子叔母は、いつも物憂げで無関心で孤独だった。まるで、心の内部に暗くて深い裂け目が横たわっているかのように。ふとしたきっかけで叔母の謎多き過去を調べるようになった私は、叔母の旧友という老婦人から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。そして、その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、女学生時代の叔母の姿だった。いったい何が叔母を変えたのか。香気あふれる文芸ミステリー。
著者等紹介
多島斗志之[タジマトシユキ]
1948年大阪生まれ。広告代理店に勤務。1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー
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感想・レビュー
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はやしま
23
多島氏三作目。事件の発端が戦時中の出来事、回想録を使う、もしくは回想で語られる、思わぬ人物が重要な役割を担う、何気なく書かれた小物に意味がある、と既読2作品と共通点がある。氏の作品がこの枠にはまるものばかりだではなく偶然だろうが。本作の意外な小物、意外な人物の役割は面白かった。『黒百合』に通じるものを感じる。表紙と中表紙の写真も途中で意味がわかりあっとなった。全体に卒なく展開するが、回想録の章は意図的だろうがやや冗長な印象。本作は『症例A』より後に書かれたが、『症例A』の方が完成度は高いと思う。2021/02/27
ひろ
16
亡くなった叔母の過去を探る物語。戦中、戦後にあった事実は切なく哀しい2017/07/16
zanta
9
そうだ、こういう歴史も確実に存在したのだ。自分の信念に基づいて行動し、拘束されたり、刑を受けたり。拷問も。おもいびとが途中で変わってしまったような居心地の悪さはあるにしても、歴史の渦が個人が自由に生きることを許さなかった時代はあった。現代にいきる幸せを思う。2013/07/12
micari
5
56.時代が時代なだけに暗くて単調で長い話なのかなぁって思ったけど、独特の雰囲気があって楽しめた。でも結局のところ、藍子の心理はわからないまんま。そういう話だから仕方ないけど。もしかしたら私の読みが足りないのかも。2021/09/20
莉玖
2
亡くなった叔母の過去を、少しずつ紐解いていくお話。2015/12/03