内容説明
祖父の遺灰を抱いて沖縄を訪れた大学生の秀二に渡された三本のテープ。そのラベルには「八月十五日、夜」と記されていた…。離島・伊是名島の「あの夏」、流れ出す男の声、息を呑む証言、真夏の夜、敗残兵たちの影、そして無意味な死。生きることへの限りない励ましを伝える渾身の力作。さとうきび畑で地獄を見た祖父たちから平成世代へ―。静かな島の、醜い戦争を描く物語。
著者等紹介
蓮見圭一[ハスミケイイチ]
1959年、秋田市生まれ。立教大学卒業後、新聞社、出版社を経て、2001年作家に。デビュー作の『水曜の朝、午前三時』は大阪万博をテーマにした小説。叙情的な語り口と物語性が圧倒的な支持を得てベストセラーになる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まつり
5
無駄死にというのがあるとすれば、無駄殺しというのもあるのではないか。沖縄に軍隊がやってこなければ血を流さずに降伏できたかもしれない。「解散」した軍隊。「戦いたいなあ」自分たちのやっていることがなんの大義名分もない虚しさ。誰も知らないそこであったこと。ヒーローにもならず、責任も取らず、血塗られた記憶だけが残る。誰だっけ?となんとなく最初から読み直していると、追憶のテープに出てくる軍人の名前が、ただの老人として出てきて、現在との繋がりがわかり、一言に戦友と言っても、いろんな関係があるのだなぁと、腑に落ちた。2013/08/04
エバ子
3
★★★★「あの頃はどうだったかと訊ねてくる人たちは、戦争が個人的な体験であることに気づいていないのです。みんなが同じような苦境に置かれ、似たような辛酸をなめたと思っている。戦争に限らず、あらゆる体験は個人的なものに過ぎません。」 「戦争の時代、復興の時代、繁栄の時代…どんな時代も過ぎてしまえば一言に要約されてしまう。そのために個人的な体験のほとんどがこぼれ落ちてしまう。」 2008/08/27
七月
1
回想語りの形だから人物が多いしあちこち飛ぶし、で人の語りって分かりにくいよねって所がリアルにも感じた。戦時ものに必ずあるとおり、ここでも戦時の名の下に私刑がまかり通ってしまってるのが恐ろしく、そんな大きな流れにならないような細かい衝突が必要なのかもなぁと、いつもの戦時もの感想。2025/01/12
とし
1
今はとても平和で、だけど大戦当時は誰もが戦争という極限状態に置かれていて命というものの価値が。違ってしまっていたのだろうな、読んだので気づかされたけどこんな事は普通に起きていた事なのだろうな!今更ながらに戦争はやってはいけないととても思わされたな。2018/07/29
Kyo
1
敗戦を知らず、沖縄本島でもなく「平和」な離島で続いていた戦争。その生臭さの前に主人公の家がアカだとか秀才の兄だとかは別に要らないんじゃないか?聞き手が必要だとしても2011/12/04
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