出版社内容情報
いかに生き直すか。外地で死を覚悟した復員兵、矢田部信幸は日本の美と工芸、その源を辿ってゆく。重さと艶が違う著者初の現代小説。
23歳の終戦、いかに生き直すか。直木賞受賞作『生きる』から十年、著者初の現代小説。福島県費生として上海の東亜同文書院に学び、現地入営した矢田部信幸。七年ぶりに戻った祖国は灰燼に帰していた。復員列車で助けられた男をたずね、深山を巡るうち、木工に魅せられ、その源流とこの国のなりたち、暮らしのありようを辿ってゆく。戦争の爪痕、男女の機微、歴史観……重さと艶が違う、第一級の長篇小説。
内容説明
福島県費生として上海に学び、現地入営した矢田部信幸。復員列車で助けられた男を探し、深山を巡るうち木工に魅せられ、木地師の源流とこの国のなりたちを辿ってゆく。23歳の終戦、いかに生き直すか。直木賞受賞作『生きる』から10年、著者初の現代小説。
著者等紹介
乙川優三郎[オトカワユウザブロウ]
1953年、東京生まれ。1996年、『薮燕』でオール讀物新人賞、1997年、『霧の橋』で時代小説大賞、2001年、『五年の梅』で山本周五郎賞、2002年、『生きる』で直木賞、2004年、『武家用心集』で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
70
23歳、復員列車で助けられた小椋という青年を尋ね、木工・木地師、彼らの辿った道のりを追う矢田部信幸。壮大なストーリーでした。日本人のルーツ、渡来人たちのこと、考えさせられました。タイトルの山脈は、奥羽山脈だったのか!2017/03/09
ガクガク
52
乙川優三郎初読。戦後の苦悩と共に木地師研究にかける主人公、矢田部の姿とその人生に深く関わるタイプの異なる女性(多希子、佳江)が描かれる。木地師の源流と歴史を辿る旅はそれなりに興味深く読ませるが、記紀の虚構や古代史の解釈は内容が専門的すぎて歴史マニアでない限りついていけないレベル。この部分は一般的な読者は敬遠してしまう。ここを除けば素晴らしく読ませる小説だと思う。特に二人の女性は生き方も性格も異なるが、個性的で魅力に溢れて描かれ、主人公や他の登場人物を圧倒する。15年後の恩人との再会・第2の目標はやや唐突。2014/01/25
どんぐり
39
自分の人生を生きるよりも、木地師や木形子のことを調べたりしながら悠々自適な生活を送っている男の話。僕の好みに合わない小説だった。そもそも働かないで生きているなんて、許せない奴だ。2014/08/24
アナクマ
35
戦争の痛手から立ちあがろうとする人びと。主人公は戦時の恩人だった木地師の跡をたどる。時代小説で培った端正な筆さばきで一刀彫のような印象を抱かせる再生の物語。◉前半1-3章「飢えた人を救うことが人間の良心なら、飢える人を作らないことも良心だろう」◉「いい仕事だね、杉のようには重宝されない木から美しい器や道具を生み出す、そこがまたいい」◉物語展開には直結せずとも作品の味わいを左右する控えめな修辞がそこここに。山の侘び住まいの暗がりに無垢材の白さと香りが引き立つような清新さを感じる。木地師。近江、越前、飛騨、→2024/06/24
それいゆ
30
著者初の現代小説は、どことなく時代小説的な雰囲気がいっぱいでした。復員して故郷に帰るまでの列車の中での話、復員列車で助けられた男を探す旅をするあたりまでの話は新鮮で、久しぶりにすごい小説に出会ったという気持ちになったのですが、この作品の主要な部分を占める木地師の話がとても地味でした。本の装丁からして、静かで落ち着いた感じです。最後に大きな感動があるのかと思いきや、それほどでもなかったので、がっかりです。2013/06/05