出版社内容情報
沖田林太郎――沖田総司の義兄にして、江戸中を取り締まる「新徴組」の小頭。預かりの庄内藩が戊辰戦争参戦を決めたとき、凡庸だったはずの男は家族のために立ち上がる!
内容説明
沖田総司の義兄、林太郎。使命感に燃える道場仲間を横目に無難第一を決め込むつもりが、生き別れの総司によく似た“庄内藩きっての神童”酒井吉之丞との出会いにより、時代の渦に飲み込まれていく…最新鋭の洋式軍となって鶴岡を戦火から守った新徴組の軌跡を、愛する家族を守るため、自分の殻を破ろうともがく男の姿に重ねて描く感動の歴史ロマン。
著者等紹介
佐藤賢一[サトウケンイチ]
1968年山形県鶴岡市生まれ。山形大学教育学部を卒業後、東北大学大学院文学研究科で西洋史学を専攻。93年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞、99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ともくん
42
新撰組から袂を分かち、江戸に戻ってきた新徴組を描いた。 新徴組は、聞いたことはあったが、詳しくは知らなかった。 少し地味で、読んでいて感情移入がなかなかできなかった。2018/07/16
森林・米・畑
34
京都で名を馳せた新選組は有名だが、江戸市中見廻組の新徴組は良く知らなかった。沖田総司の義兄、沖田林太郎と鬼玄蕃と恐れられた酒井玄蕃を中心に幕末~戊辰戦争までを描く。戊辰戦争は会津に目が行きがちですが、北部戦線での庄内藩の活躍は圧巻。酒井玄蕃を中心とする庄内藩、新徴組の結束は見てて気持ちがいい。ぜひ大河ドラマに取り上げて欲しいと願います。2021/03/09
マッピー
19
長州藩に蹂躙されてぼろぼろになった会津藩と違って、薩摩と闘った庄内藩は、戦後もそれほど大きく所領を減らすこともなく、薩摩とも友好関係を結んでいたと聞いたことがありました。そして、それが西郷さんの計らいだということも。 戦火を交えて一度も負けたことのなかった庄内藩。純粋で頭が良くて剣の腕もある庄内藩の重鎮(ただし若造)の酒井吉之丞。沖田総司の憧れの義兄であるのになぜか自己評価の低い沖田林太郎。この二人が交互に語る幕末の世相と庄内藩の藩士たち。知られざる歴史がここに。 2020/07/02
星落秋風五丈原
19
長年佐藤作品を読んできた方たちは本作の主人公、沖田総次郎や庄内藩家老の息子・酒井吉之丞に、意外な印象を持つだろう。何しろ破天荒さが少しもない。彼等は平穏を愛するタイプだ。波風を立てぬように生き、昨日と同じ日常がこれからも続いてくれることを望んでいる。同じ幕末にはさまざまな動きがあったにも関わらず。主人公とするならば、総次郎の義弟・総司の方が、よっぽどふさわしいのではないかと思われる。本作が、主人公の破天荒さを前面に出さずとも読ませる作品であることは、氏の作家としての幅が広がったということに繋がる。2010/09/30
東の海月
17
「新徴組」の沖田の物語。組本体というよりは、庄内藩が注目されているかも。登場人物はそこまで多くなく、全体的にすっきりした雰囲気。しかし、じわじわと深みが増してくる。林太郎と吉之丞の人柄は全然違うんだけど、どちらも魅力的だった。正反対な人間臭さがあるのかな…。彼らを通して見る戊辰戦争は今までになくて、印象が結構変わった。それから「ぼろ鳶組」の新庄藩が出てきて嬉しかったけれど、内容はちょっと哀しい。馴染みの藩と戦わざるを得ないって辛いな。しかし読了感はすごく良かった。また読みたい。2022/02/01