出版社内容情報
あなたも私も、いつかどこかで「もうひとつの世界」と?がっている。アプリで知り合った彼のこと、どこまで信じていいのだろう? あの日、かき氷を食べたせいで、自分はガンで死ぬというのか? 誰もがどこかに伝染させている。この不毛な連鎖を止めるのは誰? コロナ禍、ストレス、重病リスク……。すべてが不確かな時代に生きる私たちの「ありえたかもしれない」分岐を描く5つの物語。
内容説明
些細なことで、私たちの運命は変わってしまう。あり得たかもしれない幾つもの人生の中で、何故、今のこの人生なのか?―その疑問を抱えて生きていく私たちに、微かな光を与える傑作短篇集。
著者等紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975年、愛知県生れ、北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した「日蝕」により芥川賞を受賞。以後、一作毎に変化する多彩なスタイルで、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は小説作品として、『決壊』(第59回芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『ドーン』(第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞)、『マチネの終わりに』(第2回渡辺淳一文学賞)、『ある男』(第70回読売文学賞)などがある。評論、エッセイとして、『三島由紀夫論』(第22回小林秀雄賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
304
平野 啓一郎は、新作中心に読んでいる作家です。著者10年ぶりの短編集、どの作品も好いですが、オススメは表題作「富士山」&「鏡と自画像」です。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001701.000047877.html 2024/11/16
はにこ
220
いかにも平野さんらしい短編集。文人主義炸裂だね。あのときこうしていれば、とかもしこれをしたらとか考えることあるけど、それがふんだんに散りばめられている。最後のストレス・リレーはバタフライエフェクトみたいで面白い。自分がまいた不機嫌がこんな風に広がったらいやねえ。2024/10/29
のぶ
208
平野さんの短編集は初めて読んだが面白かった。もしもあっちを選択していたら…という世界が描かれた五つの物語。パラレルワールドの方の心情描写もすごく丁寧なせいか、どちらが現実なのか途中でわからなくなってしまうほどでちょっと混乱。表題作が特に良かった。マッチングアプリで出会った男女が、新幹線内で起きたある出来事がきっかけに運命が変わっていく話で、結婚まで考えた二人が何故離れてしまったのか、偶然に起きた事件が大きく未来を変えていく。考えさせられた。今までの平野さんにない作風で、新たな傑作だと思う。2024/11/07
けんとまん1007
187
5つのものがたり。どれもこれも、独特の空気感を纏っていて、多くが、何とも表現しにくい不気味さというか、不透明感が残る。5つの異なる味わいの底辺にあるのが、人間という生き方のつながり。たまたま・・なのかどうなのか。どこかのタイミングで、選択肢が違っていたら、どうなっていたのだろうかを考える。それぞれの物語に、入り込んでしまいそうになる点が、自分の中にある。そんな5つの中で、「手先が器用」と「ストレス・リレー」が、印象深い。今後の指針になりそうな要素がある。2025/01/11
貴
181
100系だったのか、もしかしたら0系なのかもしれません、静岡に行くのに、こだまに乗った、もうな亡くなった上司と。さすがに車両は古くとてもレトロだったように覚えています、座席も青いビロードでした。コヒーでも飲もうか、上司にさそわれ食堂車に、そこで見た真冬の富士が忘れられません。でも不思議です、なぜ食堂車があったのか、あの列車に。2025/01/05