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内容説明
採り上げましたるは場末の女道化師から大英帝国王妃まで。一口に肖像画といっても、モデルは正面向いた英雄ばかりじゃない。横を向いたり斜め向いたり姿態色々、老若男女、美醜身分も一切不問。希代の歴史家が名探偵となり、そんなモデルと画家が黙して語らぬ秘密、そして思いもよらぬ歴史の真実を鮮やかに解きあかす!図版74点収録。
目次
マルガリータ王女 九歳の少女に見たエロティシズム―ベラスケス
ナポレオン 未完の下絵が示した理想―ダヴィッド
ジェーン・シーモア 寵妃に潜む諦念―ハンス・ホルバイン
ショパン 孤高のロマン主義者たち―ドラクロワ
ピエトロ・アレティーノ 肖像画という名の自画像―ティツィアーノ
アルルの女、ジヌー夫人 カフェの女将に恋した画家―ゴッホ
女道化師シャ・ユ・カオ 「肖像画」をさかさまにした男―ロートレク
プーシキン ロシアに「言葉」を与えた詩人―キプレンスキー〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
13
歴史家が肖像画から描き出す、画家とモデルのドラマ、そこから浮かび上がる歴史についてのエッセイ。例えばドラクロワが描いたショパンとジョルジュ・サンドの画では、この二枚を本来一枚の絵画と推定し、この三人の天才のつかの間の交流を印象的に描いている。また、ナポレオンとダヴィッドという、その政治性も含めて取り沙汰される二人の関係を絵画から改めて再構成し、ダヴィッドの再評価を訴えている。派手に面白いところはなく、多作な著者の本の中では余技に近い一冊だが、しっかりした歴史家の手腕が伝わって楽しめた2015/01/07
ラグエル
5
ダヴィッドって、画家である前に政治家でもあったんですね。2011/12/12
smatsu
1
1991年から3年間、新潮45で連載されたエッセイをまとめたもの。絵画そのものについて語るというよりは肖像画のモデルや画家、時代背景について著者ならではの博覧強記に基づく歴史ウンチクを語る本です。36作品が取り上げられていますが、絵としていちばん自分の印象に残ったのはミレーの描いたポーリーヌ・V・オノの肖像画でしょうか。話としては、ユトリロとその母シュザンヌ・バラドンの物語とか。それとラディゲが『肉体の悪魔』を書いたのは16歳~18歳で、しかも20歳で亡くなったと言う話。早熟な人生ですね…2019/01/26
figaro
0
肖像画には画家と対象との関係が映し出され、その関係にはその時代の桎梏が封じ込められている。オノの肖像の清廉さ、カスティリオーネ像の叡智、背後にある重厚な人間関係が映し出されていると語られる。ジヌー夫人、麗子像、ユトリロ像など、画家の強烈な思いが封じ込められたものは、時代から超絶したところがあるかもしれない。著者の確かな知見を頼りに絵画の中の時代を読み解くのは楽しい体験だった。2015/08/29