内容説明
十五年ぶりに再会した十九歳の息子は、ひきこもりだった。働く意欲のない姿に苛立つ父。二人の心が通いあう日は、果たして来るのか―。清々しい余韻の傑作長編。
著者等紹介
本岡類[モトオカルイ]
1951年、千葉県生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務をへて、81年、「歪んだ駒跡」でオール読物推理小説新人賞を受賞し、作家に。千葉県我孫子市在住
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
164
読メのレビューで気になり、手にとった作品です。妻と離婚し、人里離れた牧場で一人、細々と酪農をしている「高峰」の元に15年ぶりに突如として現れた引きこもりの息子「悠平」。そんな二人がギクシャクしながらも少しずつ、歩みよりお互いをフォローしながら再生していく物語です。酪農がいかに大変かをベースに綴りながら、親と子の微妙な関係も見事に描写しており、すんなりと読むコトができました。人生、本当に色々あって、人それぞれに失敗もある分、学ぶべきコトもありますよね。やっぱり人は希望を持ち続けるコトで、成長するんだなと。2019/11/14
chiru
104
15年ぶりに再会した父と息子が、一歩前へ踏み出していく物語。牧場を営む父親のもとへやってきた、引きこもりの19歳。衝突を繰り返す二人だけど、子牛の誕生に立ち会った瞬間から、息子に変化が生じていく。引きこもりの原因は、自分の死球が奪った少年の未来。"あの時失敗した自分“と決別して、溺れる少年を救うシーンは本当に感動的。そして、癌を患う父親の、息子の背中を押して送りだす気持ちが、優しい風みたいに心を通りぬけていく。大切なことは近道ではなく、遠回りした道にきっとある。心から読んでよかったと思う作品です。 ★52019/11/12
かずー
83
息子が幼い頃に離婚し牧場経営を始めた。19歳になった息子「悠平」が突然牧場に来ることになった。悠平はあることをきっかけにひきこもりになり問題を抱えていた。なかなか心を開かない悠平にイライラするが、牧場、周りの人達のお陰で成長していく過程が素晴らしい。牧場に遊びに行きたくなる。2021/07/28
とし
66
時代小説以外で初めて読む作家さんはいつも最初の読みだしで足踏みしてなかなか前に進まない(>_<)が、第一章を終わる頃から引き込まれて一気読みしました。幼い時に別れた息子と父親が15年ぶりに父の経営する牧場で再会し1年程で二人のわだかまりや、息子悠平の引きこもりの原因への葛藤がやがて溶けていく、爽快で心が暖かくなる物語でした。獣医晴子先生の言葉「一人前になるまでには、他人には言えない恥ずかし行為をいくつもしていると思うの。恥ずかしい行為をしたから、そのマイナスを跳ね返そうと頑張って・・・・」2014/04/24
たか
60
高校卒業後引きこもりのような生活を送る息子・悠平と、離婚以来十数年ぶりに再会した酪農家の父・高峰が牧場で一緒に生活するようになる。 人生に行き詰まり、なかなか前に踏み出せない少年が、牧場生活で暮らす人々や動物、そして自然と心を通わせながら成長していく姿は、見ていて心地良い。 そして、悠平の不器用で繊細だけど、真っ直ぐな気持ちが、やがて高峰や周りの人達にも少しずつ変化をもたらしていく。 ラストの獣医・晴子先生の飾らない言葉が心に響く。 牧場には『夏の魔法』がある、そんな気持ちにさせてくれる本だった。B評価2021/06/22
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