出版社内容情報
六七年目にして明らかになった帝都の惨状。極秘写真に加え、数々の超一級資料と当事者の証言から、狂気の大量殺戮の実相が明らかに。
その一枚一枚に刻まれた悲しみの轍。写真をも凌駕する衝撃の事実! 2011年夏、東京の民家から発見された大量の未公開ネガ。それを手に、取材班は当時撮影された場所や人々にたどり着く。そこで得られた証言や事実の数々は、写真の衝撃をも上回るものだった。入手に成功した米軍の作戦計画書、焼夷弾の燃焼実験映像など、超一級資料もあわせ、百回以上に亘った大空襲の全貌を解き明かす。
内容説明
ハンカチにくるんだコッペパンを手に、防空壕で息絶えていた妹―。焼夷弾の威力を知らされずに、バケツリレーで消火に励む人々。67年前、銀座空襲の「衝撃写真」と当事者による「証言」。「精密」から「無差別」へ、米軍が企図した戦術の背景。未公開写真が伝える、「史実の裏側」にある、壮絶なドラマを克明に再現。
目次
序章 六十七年間の封印を解いた五百八十三枚の未公開写真
第1章 B‐29が初めて東京を空襲した日
第2章 カメラマンが記録した空襲―陸軍参謀本部傘下「東方社」その実態
第3章 米軍が計画していた緻密な「無差別爆撃」
第4章 原宿が炎に包まれた―東京空襲三日目の悲劇
第5章 東京のシンボル・銀座が空襲で破壊された
第6章 東京大空襲は計画的な無差別大量殺戮だった
第7章 「三・一〇」わずか一夜に十万人の命が奪われた日
第8章 全国で展開された都市空襲―罹災一千万人今も癒えぬ苦しみ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
59
100回超の空襲。生命はもちろん、精神的な喪失も計り知れない。日米双方のプロパガンダの交錯。所詮戦時下の政治、国民のことなど念頭にない。一方、発見された写真に垣間見る東方社カメラマンの心の痛み。反骨心や映像文化保護など綺麗ごとではなく、真実の伝承!炭素化した死体など壮絶な写真。(誤解を恐れず言えば)これも戦争の現実。実体験が活かされない人類の愚かさ、(戦争・内戦・テロなど)が続く現代も悲しき現実。様々な国の一般市民が通らざるをえなかった”道”を、腹に落とす術や如何に。風化・・・、考えさせらる。2017/01/03
壱萬参仟縁
27
空襲のターゲットは「軍事施設」と思いこんで いた市民たち(31頁)。 この、思いこみ、というのは戦時下では危険である。 見込み違いで多数の人がいのちを失うケースがあるためだ。 「市街地を空襲せよ」初日から市民の命を奪った東京への 空襲(63頁~)。 無差別攻撃、ということばは、 無差別テロ、と同じに思えるが、 戦争だから、敵国が無差別に異国民 のいのちを奪っていくことだ。 テロも無差別とはいえ、 戦争は主体が国家である。 2014/04/08
たまきら
18
素晴らしいドキュメンタリーだった。本は焼き直しだが、視覚でなければ伝わらないものが、網膜に焼き付いてしまった。ここまで冷静に「ダメージを与える」を最優先にできる世界が存在する。今現在も。その場に駆られる側として立つ身には、だれもなりたくないはずなのに。2016/02/01
スー
17
54祖父が空襲の体験談を聞かせてくれたのは御巣鷹山日航機墜落事故のニュースを一緒に見ている時だった、あちこちに手や足が落ちていて木に頭部がぶら下がっていたそうです。空襲の酷さに怒りがこみ上げてきました。被害者が多かった理由はアメリカ軍が逃げ場を塞ぐように焼夷弾を投下したのが原因ですが防空法により逃げずに消火するように指示されてい為でした。アメリカは初期の頃から日本の都市の空襲を計画しており燃えやすい場所燃えにくい場所の地図が作られいて計画的に一般人を殺戮した。怒りと共にその用意周到さに驚愕しました。2019/04/08
うめけろ
5
アメリカ人だけでなく、日本人ですら戦争=原爆ととらえがち。原爆が落とされるまでに、こんなに壊滅的な空襲を受けながら終戦の決断ができなかった軍のトップの責任は重いし、日本人としてそういう歴史があったことはきちんと把握しておくべきだと思いました。もちろん「空襲」があった、くらいは認識していますが、そこにどんな事実があったのかはほとんどの人が知らないでしょう。本書についてはタイトルで「583枚の未公開写真」とぶち上げている割には掲載されている写真がとても少ないので、それが少し不満でした。2012/10/11