著者等紹介
保坂和志[ホサカカズシ]
1956年、山梨県生まれ。鎌倉で育つ。早稲田大学政経学部卒業。90年、『プレーンソング』(中公文庫)でデビュー。93年、『草の上の朝食』(同)で野間文芸新人賞。95年、『この人の閾(いき)』(新潮文庫)で芥川賞受賞。97年、『季節の記憶』(中公文庫)で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞
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感想・レビュー
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踊る猫
31
綿密に書かれた野球試合の様子、住む家の構造、自然、思弁そして人々の(時に途方もなくスケールの大きな)会話。そういったものがタペストリーのように織りなされ、豊かな世界を産み出している。実に保坂はその五感を通して世界を体験/体感し、それを文字だけで構成される小説という器の中で私たちにも追体験させんと書き綴る。ゆえにその記述は安易に読み飛ばしてしまってはならない。ダラダラと書き連ねられているようで、こちらの五感を試す実験的な試みがなされているようでもあり、実にオーソドックスな日本文学の世界に回帰する作品でもある2022/03/20
Comit
25
市立図書〜「控えめに言って最高です。」原田ひ香さん著書、『古本食堂』に登場する女子大生が言っていた言葉がとても印象的で興味を持った一冊。一つ屋根の下、共に暮らす人達+🐈🐈⬛🐈、よく喋るな〜(笑)ドラマはないですよ。何も進展もしていません。読み終わっても何か得られる感覚もありません。でも読み終えた時、家の構造から庭の草木、ついでに横浜ベイスターズの事が詳しくなります🤭“カンバセイション・ピース”の意味、調べてみると納得。飾らない日常と、他愛もない会話、生活環境の詳細な描写はまさに“集団肖像画”なのだろう。2024/07/20
踊る猫
23
立体的に世界が立ち上がってくるような、そんな感覚を味わった。それは著者が小説の中できちんと聴覚に訴える描写をして読者に音を聴かせるからだろう。いわんや視覚にしても然り。文字を通して世界がヴァーチャルに展開される。ただそこにあるものがなにかを情報として提示するのではなく、ものを超えた背後にある概念(過去や幽霊や死、といった言葉になりにくいもの)までも指し示していること。哲学的と言われがちな保坂の世界だが、実はなかなかこうして読むとリアリストとして世界を受容し、知覚し、それを綿密に描こうとしている苦闘が見える2020/06/27
なつ
20
長いよ、、、。さして事件が起こるわけでもなく、オチがあるわけでもなく、淡々と物語は進む猫と野球と従兄弟たち。どうにか読みきった。何も予定がないときにゆっくりまったり読む本かこ。思考回路に「は?」となりながらも「そんなもんかも」と思ったり。どことなく面白かったようにも思う。2016/08/19
エドワード
16
子供の頃よく遊びに行った伯父の家。大勢の人々が住んでいた古い日本家屋に住むことになった、作家の高志と妻の理恵。会社経営の友人たち三人と妻の姪の六人暮らしに、従姉兄たちが遊びに来ての賑やかな会話。古い家には、暮らした人々の記憶がしみこんでいるという高志に共感する。インテリ高志の思考回路は他の人の数倍速く回っている。たかがネコ、たかが幽霊、たかが木のぼりでも洞察がどんどん深まっていく。妻や同居人にあきれられても、わかっちゃいるけど止められない。穏やかで慈愛に満ちた家族の肖像画、というのが題名の由来ですね。2014/05/09
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- 和書
- 今川氏滅亡 角川選書