出版社内容情報
エロスの正体は痛みなのか? 女性麻酔科医は人体実験さながらセックスを弄ぶ。癒しなんて妄想かも知れない――天童荒太は挑発する!「診察したいんです。あなたのセックスを」体の痛みを喪った青年は、その若い麻酔科女医にとって舌なめずりしたいような実験材料だった。他者への共感を生来持てなかった彼女は、快楽の在処を確かめるべくセックスを繰返す。痛みと愛を前提にこの世が成立っているのなら、私たちはその向う側を目指すべきじゃないかしら……。人間の倫理とDNAを決壊させる長編小説。
天童 荒太[テンドウ アラタ]
著・文・その他
内容説明
心の痛みのない女と体の痛みを失った男。そこに愛は生まれるのか。進化の扉は開かれるのか。倫理や常識を超え、今、DNAの壁が決壊する。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960年、愛媛県松山市生まれ。1986年『白の家族』で野性時代新人文学賞を受賞して文壇デビュー。1993年『孤独の歌声』で日本推理サスペンス大賞優秀作、1996年『家族狩り』で山本周五郎賞、2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞、また2009年には『悼む人』で直木賞を受賞した。人間の最深部をえぐるそのテーマ性に於て、わが国を代表する作家である。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
216
上下巻、600p強完読しました。母娘三世代、痛みに纏わるクロニクル、心に身体に響いてきます。痛みは、快楽と常に表裏一体なのかも知れません。肉体的な無痛も精神的な無痛も、どちらもかなりリスキーなんでしょうね。精神的な無痛は、サイコパスに繋がる気がします。私は、どちらかというとSなので痛いのは嫌いです(笑)本作は、今年のBEST20候補、【読メエロ部】課題図書です。2018/05/26
いつでも母さん
173
体の痛みと心の痛みどちらが辛いだろう・・が、まずの感想。痛みを感じるのは脳の問題でと医学的に説明を受けてもそこは天童作家だ、過去から連綿と続く人間の未来への提唱でもあった。この万浬は残酷なのだけれど哀しくも感じてしまう。勿論私は向こう側には行けないけれど、万浬の明日がどうか穏やかにと願ってしまう。ラストのシーンは映像に向く場面だと思う。が、この作品はR18だ。天童作品は疲れるなぁ。2018/05/19
うっちー
115
心と体の痛みを観念的に書かれています2018/06/11
のぶ
95
下巻に入っても、万浬は痛みというものにこだわり、森悟の診察を続ける傍ら。肉体関係を持ち続ける。末期ガンの痛みの治療を万浬に託した患者の話がサイドストーリーとして出てくるが、あくまで痛みという事に対してのテーマが前面に出ていて、この本のあらすじを一言で表すのはとても難しい。ただ痛みというものを通して作者が描きたかったのは、突き詰めれば人間の愛であり、それは小説家、天童荒太が「家族狩り」以降ずっと追い続けてきたもので、その一つの物語だと思えば、何となく納得できる気がする。2018/06/23
紫 綺
82
昭和初期の官能小説のように感じた私は、凡人なのだろう。理解出来る才があれば、現人類を越えてニュータイプ足り得るのだろうか?そうなれば痛みを感じる事は無くなるのだろうか?2019/12/19