内容説明
昭和の凶々しい異形の悪夢を背負って生き、死んだ天才の「仮面の生涯」―。凄絶な割腹死から22年、あえて出版せずにきた「評伝」を公開、三島由紀夫をめぐる隠された「伝説」の謎を解く。
目次
不思議な共感―昭和の昭和への復讐
三島由紀夫の生まれ育った時代―近代から現代へ
異常な幼少年期
祖母奈津
学習院時代
再び祖母奈津及び母倭文重
『詩を書く少年』
『彩絵硝子』から『花ざかりの森』へ
処女創作集『花ざかりの森』の頃
『花ざかりの森』の裏面
敗戦まで
敗戦と新現実
死への接近『盗賊』〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
67
三島没後22年たって書かれた彼と親交のあった評論家による、評伝・作品論。470ページ二段組の大作であるが素直で読みやすい。三島の生涯を時代別に分け、出来事や作品などを解説していく。小説以外にも戯曲や評論なども多くあり三島の成長で作風が変化するのを解説。特に敗戦と『仮面の告白』についてが興味深かった。『仮面』は創作ではないと考察する評論を著者が発表した後、三島がその通り、あれに嘘は無いと答えたそうだ。本筋ではない等身大のエピソードに感心。三島の子供の頃からの肉体的劣等感、運動音痴のことなど。ファンならぜひ。2018/03/26
風に吹かれて
6
三島と長年交流があり書評も書いてきた著者が、かつての原稿を全面改稿・加筆し三島の死後22年経って刊行した『伝説』。「花ざかりの森」と「天人五衰」の末尾が同じという指摘に、寝転がって読んでいた身を思わず起こしてしまった。『伝説』は、ミシマ事件に向けて、ミシマという人間の生育・生活・作品を読み解いていく。三島作品を読むとき、あの事件が頭から去らないのだが、この原稿用紙1400枚の『伝説』を読み終えて思うのは、今後三島作品を読むときは『伝説』を忘却し、作品の世界の中だけで愉しみたいということだ。2015/08/03
しんかい32
1
奥野は自分の色をガンガン押し出してくる批評家で、同性愛に蔑視的だったり精神分析による読みが拡大解釈っぽかったり、そのまま受け取れない部分もある。とはいえさすがの筆力と、本人の友人だった強みで、三島のこみいった人格が一つの像を結ぶ感じがあり読ませる。全体的には何やっても幸せになれないかわいそうな人という感じ。あとやはり文芸批評家による本であるためか、作品中心で楯の会関連の具体的な記述などは少ない。文庫版は短縮されてるらしいので要注意。2012/07/03
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- 和書
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