内容説明
父は東京芝の家具職人で、長男だから出征することはないと安心していたと思う。戦地から届いた葉書は、子供が喜びそうなビルマの珍しい風習や自分の似顔絵などの「絵入り」だった。国民学校の入学時には私の姿を想像し、描いてきた。絵入りの葉書に込められた父の思いと戦時下の暮らし。直木賞作家が綴る追想記。絵入りの葉書、多数収録。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
1938(昭和13)年生まれ。生家は東京の芝で、父は家具職人だった。石油会社、写真スタジオに勤務後、コピーライターを経て、’69年、「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞を受賞。’89(平成元)年『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花賞、’93年『恋忘れ草』で直木賞、’97年『江戸風狂伝』で女流文学賞、2005年『夜の明けるまで』で吉川英治文学賞を受賞するなど、歴史・時代小説の第一人者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
170
なんと優しいお父様なのだろう。が正直な感想です。北原作家の父親と家族のあの頃の事。東京大空襲を生き抜いた時代の証人が今はもういないのだ。よく葉書が残っていたなぁと・・戦地の父からの葉書が優しくて胸が痛い。ビルマの人々の暮らしも知れて、これが戦争でなければ・・と思った。今頃はあちらでお父様と会えているだろうかー2018/08/13
チェブラリー
3
戦中の物語、父の記憶のおぼろげな感じが 戦争のむごさを感じさせる。2011/08/08
takao
2
ふむ2023/11/26
いづむ
2
戦地から幼い娘にあてて届く膨大な数の手紙の一枚一枚に愛情がこもっているのを感じ、読みながら喉の奥が何度も熱くなりました。何の保障もなく次々に戦地へ送られていった男性と、残された家族、双方ともに違った苦しみを経験しながらお互いを想いつつバラバラに生きていくなんて、、、こんな悲惨なことはやはり繰り返してはいけないと強く思いました。一方で、悲劇と緊張にあふれた戦時中でも日々の喜びやユーモアも感じながら生きる人間の強さがあるのが救いです。最近はメールが多いけれど、家族や友達に手紙を書きたくなりました。2013/05/19
mawaji
2
戦地に赴いた兵隊さんのほとんどは、著者の父のように内地に残した家族のことを毎日思い続けていたのでしょう。この目で見ることが出来ない子どもの成長を、想像しながら絵はがきに書き送る父親の気持ちを思うと、胸がいっぱいになります。今この時も、世界のどこかで戦争が起きているのですよね...。2010/02/07