出版社内容情報
国家機密を胸に粟田真人は長安を目指した。そこが迷宮の入り口とも知らずに……。遣唐使の代表として波濤を越え運河を遡った真人。その眼に映る唐は、則天武后のもとで大きく様変りしていた。解決せずには帰国も覚束ない懸案があった。使節団にも漏らすことの出来ぬ秘密交渉の糸口はどこにあるのか。ゆくりなくも彼は、王宮の奥つ城で妖しくも美しい月を見た――。作家生活三十年の蓄積を傾けた歴史情報小説。
内容説明
日本の安定のためにはこの外交交渉が不可欠だ―栗田真人は重要な機密を胸に波涛を超え長安を目指す。唐を舞台とする歴史情報小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
197
安部 龍太郎は、新作中心に読んでいる作家です。藤原不比等の時代の日本と唐との国交回復、遣唐使物語、歴史小説ながらミステリアスな冒険譚(かなり創作入ってます)でした。当時の遣唐使は、現在の月へ行く位の困難さだったんでしょうね。 https://www.shinchosha.co.jp/book/378810/2020/06/19
KAZOO
112
安部龍太郎さんの作品は最初の「血の日本史」を読んで以来だと思います。歴史でしか知らない遣唐使をよくここまでの読みものにしてくれたと思います。粟田真人という人物は知りませんでしたが万葉集で有名な山上憶良が随行員として出てきます。当時は則天武后の時代で大変な目にあいますが、様々な人の助けにより何とか大役を果たします。楽しめます。2021/06/05
のぶ
80
天平の時代を舞台にした正統派の歴史小説だった。話は33年ぶりの遣唐使で派遣された粟田真人が、白村江の戦い以来途絶えていた唐との国交を回復するという使命で、皇帝から国書の授与を受ける事の過程が著されています。粟田真人は66歳と当時としては若くない。秘書として同行した山上憶良らと海を渡るが、唐は、則天武后が皇帝に即位して国の事情が変わっていた。真人はミッションを達成できるのか?旅の過程で多くの困難が立ちはだかり読んでいてとても面白い。印象として、時代は違うけど「アラビアのロレンス」に似ている感じがした。2020/06/04
aloha0307
27
白村江での完膚無きまでの敗戦で、中国・朝鮮への足場を失った日本 数十年途絶えていた遣唐使が702年に復活。唐との国交回復&対等な立場での条約締結 という過大なミッション...そのトップは粟田真人(63歳!) やっとたどり着いた長安は則天武后の世になっていた。高校日本史なら僅か半ページの出来事が、背後に中国が刻む悠久の歴史を感じさせながら、壮大なものがたりに仕立て上がった✿ 則天武后の美貌の皇女;太平公主 とのロマンス♥ 初夜前の晩餐での会話はドキドキしたなあ✿2020/08/09
信兵衛
25
63歳という老齢にもかかわらず粟田真人に、快男児といった姿を感じてしまう、長大で骨太のストーリィ。 歴史小説好きの方に、お薦め。2020/05/06