出版社内容情報
合田雄一郎がミレニアムを挟んで挑む二つの事件。動機と死体の接点は一体どこに──血塗れの惨劇と僧侶の轢死には、しかし共通項が・・・。
内容説明
死刑囚と死者の沈黙が生者たちを駆り立てる。僧侶たちに仏の声は聞こえたか。彰之に生命の声は聞こえたか。そして、合田雄一郎は立ちすくむ。―人はなぜ問い、なぜ信じるのか。福澤一族百年の物語、終幕へ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
141
下巻では完全な宗教に関しての話となっています。読むのに相当時間がかかりました。上巻はどちらかというと、この後の「冷血」に続くような感じの話だという気がしましたが、この下巻はある信徒がその寺院から飛び出して交通事故にあった原因を探ろうということで合田刑事とその部下が僧侶たちと話をします。これはある意味高村さんオウムを研究して仏教やバラモンについての教義をここで示された感じがします。それにしても合田刑事が正法眼蔵やバガヴァット・ギーターを読み込んでいるとは驚きです。私も読みなおそうかと思いました。2023/04/27
ダイ@2019.11.2~一時休止
116
自分の読解力が足りないのか、何この終わり方?。末長の事件は結局なんだったのさぁ~。2016/01/21
kaoru
86
末永の死の真相を探るため永劫寺サンガで捜査を進める合田。オウムの在家信者で癲癇患者でもあった末永がもたらしたものは何か。現代の都心で宗教法人が存在することの困難さや矛盾。98年2月の雲水達の(その場にいない彰閑を含む)迷路のような宗教論争(仏教の知識が足りず読み進めるのが苦痛であった)。宗教と犯罪の狭間で立ちすくむ合田は真相が明らかにされた長谷川明円との対話で「自由」とはなにかを再考する。言葉が無意味化する現代、息子で死刑囚の秋道に宛てた巻末の彰閑の手紙は世界に向けられた叫びのようだ。この世で生きて→2025/04/20
雪風のねこ@(=´ω`=)
84
彰閑和尚も秋道と同じような病だったのかもしれないなぁ。検察の(おそらくは上部および米国の圧力を受けていると思われる)永劫寺を起訴・解体しようとする思惑がとても厭らしく、僧侶がどれだけ純粋であるかが解る。思想の自由とは言いつつもなにか揚げ足を取って罠にかけようとする社会は、本当に正しいのだろうか?禅問答にうんざりしちゃったけど次作も読むよ。2020/10/15
ALATA
76
読売文学賞。前半は既存宗教とオウムとの比較論が綴られ、私の理解をはるかに超えていた。信者の事故死を軸に謎を解き明かす手法を取られているが宗教法人のからくり、合田刑事の憂鬱など事件と関係ないサイドストーリーが長すぎて違和感。唯一、部下の吉岡の発する言葉が物語をところどころ引き締めてくれているのが救い。★3※私としてはマークス~照柿~レディジョーカーの流れで合田刑事の活躍を期待していたのでちょっと肩透かし。2021/09/16