内容説明
好景気に湧く神戸の港に、自らの名を冠した船を持った鈴木よね。樟脳の木が茂る山を抱く台湾で、かなわぬ恋に身を焦がす娘・珠喜。製糖所、人造絹、船を造り、鉄と米を操り、戦時を迎えて大商いに挑む大番頭・金子直吉。彼らのよりどころ鈴木商店は戦後不況、米騒動の焼討ちを乗り越え、日の出はまだこれからのはずだった…。人の世の巡り巡る運命が絡みあい、時代の激流に翻弄されて、いま物語が動き出す―。明治から昭和へ、揺れ動く時代に繁栄した巨大商社を支えたものは…。波瀾の運命を生きた明治の女の一代記。
著者等紹介
玉岡かおる[タマオカカオル]
1956(昭和31)年兵庫県生れ。神戸女学院大学文学部卒。87年『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞しデビュー。テレビのコメンテーターとしても活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Aya Murakami
85
図書館本。 鈴木商店…。神戸製鉄とか現代につながるいろいろな企業の土台になっていたのですね。神戸製鉄って華麗なる一族のモトネタだったような…? 上巻では他人に厳しめのお家さんでしたが下巻では丸くなって人間的にも成長が見えた作品でした。 それにしても…、ウチがとっている新聞社があんな事件を引き起こしたなんて…(汗)。最終的に政府に捨て駒みたいな扱いをされたので彼らも被害者なのですが…。心が荒れてしまうってつらいですね。2019/02/20
naoっぴ
69
明治から昭和にかけた鈴木商店の栄枯盛衰。小さなお店がいかにして大きく成長し、国の経済に貢献するまでの力をつけていったのかがよくわかり興味深い。大きくなりすぎたその力が新聞の筆をきっかけとして大衆感情により削がれていったのは、移りゆく時代のひとつの流れだったのだろうか。男は外で会社の戦士として働き、女は夫の背後を守る形で会社に貢献する、そんな時代。よねが娘のように育てた珠喜の恋も絡めて、当時の夫婦のあり方と女性を丁寧に描いた作品でした。面白かった。2019/05/24
Miyoshi Hirotaka
22
鈴木よねは、二度褒章され、世界で最も裕福な女性起業家として国際的評価を受けた。初婚は13歳、「赤とんぼ」の歌詞にあるようにこの時代では普通。今風に考えると教育の機会はなかったことになる。女性に高等教育の門戸が開かれたのは大正以降だが、それまでの女子教育は家庭教育や地域教育が機能していたことは杉本鉞子の「武士の娘」に詳しい。よねが躾けられたのは繕い物。擦り切れて弱ったところには針を多く当て、衣服を大切に使う。良い習慣から学ぶことが良い教育。詰込教育による知識は消耗品でしかない。経営の神は今も昔も細部に宿る。2024/03/21
野比玉子
10
鈴木商店の栄華盛衰。全ては国益の為、民の為に手広く商売してきたはず。幾度の困難にも耐えてきたが、関東大震災によってその栄華も終わりが来るとは、全ては運が悪かったのか、時代が悪かったのか。鈴木商店は倒産してしまったが、お家さんの蒔いた桃の種は今の時代に立派に根を生やし、世界に通用する企業がいくつもありますよ。2016/07/26
GaGa
7
昔「栄光なき天才たち」と言う漫画で読んだ「鈴木商店」この時は番頭の金子視点であったが、お家さん=創業者の妻の視点で描かれ、鈴木商店の栄光と挫折が、当事者の語りなのに、客観的に語られる仕上がりとなっている。読み応えはあるが余韻はあまりない不思議な作品。2010/06/13
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