内容説明
散る前にせめて一度は酔いたい、あの酔芙蓉のように…。ぼんぼりに灯がともり、胡弓の音が流れて、風の盆の夜が更ける時、死の予感に震える男と女が忍び逢う…。互いに心を通わせながら離れ離れに二十年の歳月を生きた男女が辿る、あやうい恋の旅路を、金沢、パリ、八尾を舞台に描く長編。
著者等紹介
高橋治[タカハシオサム]
1929(昭和4)年、千葉市に生まれる。金沢の第四高等学校を経て東京大学文学部国文学科を卒業。松竹に入社し、1960年より監督作品を発表、並行して戯曲も執筆する。1965年松竹を退社、本格的な作家活動に入る。1984年、第九〇回直木賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
17
先日、高橋さんが逝去された時に直木賞受賞作の「秘伝」よりも、こちらを代表作として挙げていた新聞も多かったので、読んでみました。いわゆる「失楽園」もので、映画か2時間ドラマのような趣でした。おー、ついに読メ登録が1000冊突破!2015/06/22
みんさね
9
コミック『月影ベイベ』小玉ユキ著 を読んで図書館にて。数十年前既読なのですが、ほぼ記憶に無し。不倫恋愛が核の話ですが、街の情景、水の音、踊りの描写が印象深かったです。静止した時の曲線が美しい踊り、っていいなぁ。なんかエロチックで。しかし、そんな邪な思いも吹き飛ばす情緒みたいな物を感じます。ダメだ、絶対本物見に行きたい。2014/08/25
mami
7
あまりにも静かであまりにも激しい。不倫関係の二人が自分たちの世界しか見えなくなってゆくさまは若干古めかしさも感じるが、書かれた年代や著者の当時の年齢を考えると納得。おわら風の盆を文字だけでここまで美しく表現出来るのが素晴らしい。自分もかつて見たことがあるような気持になるほどひきこまれる。小絵がえり子を許せない感情も分かる。誰ひとりとして救われない話ではあるけれど、とても深い大人の物語。2015/11/23
ねこ
7
残念。わたしには合わなかった。ふたりいる主人公のひとり・えり子さんにリアリティが感じられなくて、違和感だけが残ってしまった。いないよ、こんな女性。髙橋治さん、女性を知らない、あほくさ、と思ってしまったのでした。ごめんなさい。でも、八尾の風の盆は、いつか見てみたい。2015/05/06
KEI
6
胡弓の調べと哀調のある歌が聞こえてくるかのような恋の話。若いときの思いを全うできずに過ごした二人が、それぞれの家庭を忘れて過ごした風の盆。二人にとっては恋の成就であったかもしれない。哀しい結末で終わろうと、そのひと時は過去の日々を取り戻すかのような時間だったと思う。現実には自分本位に生きる事など出来無いからこそ、この物語が一時大きく取り上げられ、風の盆に観光客が押し寄せる一因となったのだろう。 でも、残される家族を思えば残酷な話だ。それゆえ、二人の思いを頭では理解できても心に響いてこなかった。2010/07/07