出版社内容情報
理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学。勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それとも――
内容説明
入社9年、係長に抜擢された後藤はボディビルの選手でもあり、大会に向けて減量期に入っていたが現在82.2キロ、目標体重にはほど遠い。しかも社内では体脂肪率推定35%の課長をはじめ肥満体型揃いの同僚たちから、食事やトレーニングの邪魔ばかりされる。ところがあることをきっかけに、部内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると減量も進むことに気づき、チームの脂肪除去に驀進し始める…。
著者等紹介
石田夏穂[イシダカホ]
1991年埼玉県生まれ。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」が第45回すばる文学賞佳作となり、デビュー。同作は第166回芥川賞候補にもなる。他著に『ケチる貴方』(第44回野間文芸新人賞候補、第40回織田作之助賞候補)、『我が手の太陽』(第169回芥川賞候補、第45回野間文芸新人賞候補)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
222
石田 夏穂、3作目です。王様のブランチBOOKコーナーにて紹介されたので読みました。 もっとお仕事小説よりかと思いきや、かなりボディビルよりでした💪💪💪 https://www.shinchosha.co.jp/book/355881/2025/04/19
hiace9000
137
石田作品4作目。様々な職種の仕事に対し“当てがう”石田尺度はいつもながらユニークでシニカル、そしてデンジャラス! ボディビルダーである大手リース会社員(係長)の後藤が肉体改造に賭けるストイックさは、もはや常軌を逸し気味ー。その振り切れた針先にある内に秘めたる言葉の数々は完全にコンプラ違反。だが彼の中の自称「正義」の目線に立つと不思議な説得力と共感力を放ち始める。あらゆるものにボディビル尺度を適用し、肉体を会社組織に見立てる暴走ぶりと中間管理職の鬩ぎ合いを「文学」にするとは! その石田マッスルにも拍手を!2024/12/29
シナモン
108
自身のボディメイキングと職場のチームメイキングの連動。徹底的な無駄の排除の先に待っていたものとはー。 いやー面白かった!石田夏穂さん、今年はまった作家さんの一人。どれを読んでもハズレなし。追い続けたいです✨2024/12/18
萩
98
こんなチームリーダーは嫌だ。しかし物語としてだと超面白い。まさに作者の真骨頂ともいえる、マッスルお仕事小説だ。主人公の後藤はボディビルダー。ボディメイクに人生をかける男。職場では係長に昇進するが、デブぞろいの部署の人間たちに嫌気がさし次々と彼らを排除しようと画策する。この理屈っぽい文章、それでいて滅茶苦茶な論理、デブに辛辣すぎる視点。見事にマッチしていて切れ味抜群。私も毎日体重と体脂肪はチェックしており、それなりに自己管理しているつもりだが後藤のような思考回路になったらアウトだと反面教師になった。2025/01/27
NADIA
89
『わが友スミス』では女性のボディビルダーが語り手を務めたが、こちらは男性視点で語られるボディビルダーの日常。ボディビルダーとしての苦労が垣間見られる部分はとても興味深いが、太っているという理由で気に入らない部下を「脂肪」扱いして部署から追い出したり、職場でもボディビルの大会の準備を優先させたりと常に上から目線のナルシストぶりがムカつくね。職場での不要な「脂肪」を排除することで、連動するように自分の身体の減量も進む。次々と部下を切り捨てる先に迎える何とも皮肉な結末がなぜか清々しく感じる石田マジック(笑) 2025/04/02