出版社内容情報
時空を超える〈北の地の想像力〉の新星が鮮烈に登場。三島由紀夫賞候補作。「今夜、国際宇宙ステーションが降ってくるんだって」。北海道が全停電した日、わたしは剥製のウミガメを放つため、真夜中の公園を彷徨う。響き合うアイヌの血脈。癒やし難い生の痛み。地面から滲む歴史の声。〈内なる北海道〉と向き合い、恩寵の一瞬を幻視する大型新人デビュー! 新潮新人賞受賞作「彫刻の感想」を併録。
内容説明
北海道が全停電した日、わたしは剥製のウミガメを放つため、真夜中の公園を彷徨う。時空を超える“北の地の想像力”の新星が鮮烈なデビュー!第37回三島由紀夫賞候補作、新潮新人賞受賞作(「彫刻の感想」)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
148
三島由紀夫賞候補作&新潮新人賞受賞作のカップリングということで読みました。ウミガメを含むタイトルから南の海の物語かと思いきや、アイヌの血脈が残る北の大地の物語でした。オススメは、表題作『ウミガメを砕く』です。著者は、近い内に芥川賞の候補になるかも知れません。 https://www.shinchosha.co.jp/book/355781/2024/11/18
信兵衛
18
夕香の心情、何かよくわからない処がありますが、いろいろなものが流れ込んできていて、衝動的といった行動に何となく面白さを覚えます。 その後に、ウミガメの剥製の所以が判明し、噴飯もの。 すべては夕香が考え過ぎていただけ、のことと感じられます。2024/11/12
押さない
5
8/10 『ウミガメを砕く』 学校でのいじめ描写がいかにもメロドラマ風でそこだけ他と馴染んでいない。イメージを具象化して伝える文章力を衒いなく持っている。これが、春呼おばさんとの繊細とも何気ないともいえるやりとりやすれ違い、そして再会と和解に繋ぐ部分へ、自然と読者の中に流れ込んでくる要素になっている。アイヌのアイデンティティを”自分にとって今は遠いもの、しかし確かに、そして特別ではなく“の感覚値も上手い。 2025/01/11
咲
5
春呼おばさんが語る大正九年八月八日の大洪水。運河のそばのコンサートホールの収容人員と広い駐車場。博物館の螺旋階段が繋ぐ過去-現在-未来の三層構造。プールの前で重たいコートを着て立つブロンズ像。潮のにおいがする霧。本書のどこをさがしても、「釧路」という固有名詞は出てこない。でも、散りばめられたそれらで、私には「この物語は釧路だ」ってわかってしまう。釧路川の洪水だ。釧路市民文化会館だ。毛綱毅曠が建てた博物館だ。そこで私が生きていたことを、欠片から特定される固有名詞が保証してくれる、不思議な体験をしてしまった。2024/11/19
Koki Miyachi
3
う〜ん、今一つ気持ちに入ってこなかった。観念的というか、現実感が感じられなかった。残念。2024/12/01