出版社内容情報
高一の夏に三島由紀夫と出会った十七歳が放つ、新潮新人賞史上最年少受賞作。海を見た人間が死を夢想するように、速水圭一は北条司に美を思い描いた。高校二年の春、同じクラスの北条の「美」の虜になった美術部の速水は、彼の肖像画を描き始めた。二人の仲は深まっていくが、夏休みのある出来事が速水の心を打ち砕き――少年の耽美と絶望を端正かつ流麗な文体で描き、選考会でも激論を呼んだ話題作。
内容説明
海から死を連想するように、少年は彼に美を思い描いた―。高校二年の春、同じクラスの北条の「美」の虜になった美術部の速水は、彼をモデルに肖像画を描きはじめた。画板を挟み向き合う二人は親しくなるが、夏休みのある出来事が速水の心を打ち砕く。新潮新人賞選考会で激論の末、史上最年少の17歳で受賞した話題作。
著者等紹介
伊良刹那[イラセツナ]
2005年生まれ。『海を覗く』で第55回新潮新人賞を受賞(受賞時17歳、史上最年少)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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石橋陽子
18
伊良刹那、17歳史上最年少で新潮新人賞受賞という快挙。三島由紀夫に魅せられ、文体は三島が乗り移ったかのような作風。読書歴も短くフリック入力で書いた作品とのことで驚くばかり。読み難い漢字の数々、見たこともない熟語が飛び交い調べながら読むが進まないので頓挫。三島風に気取って書いてあるのかと思いきや、ずっしりと重みのある文章を連ね、そこには確かな実力がみられる。美に関する思想が秀逸。自殺への考察には舌を巻き、自殺とは意志を放棄する無意志な行為とだという。次回作から大注目である。2024/05/11
くみこ
14
三島由紀夫に衝撃を受けた高校生が書いた小説。分かる。迸る言葉の量と表現から、熱意が迫って来るようです。削ぎ落とした文章の美しさとか、こんな簡単な表現で心を抉られるとか、そうしたものとは対極にありますが、才能と技術は充分に感じられました。平野啓一郎さんが「日蝕」から成功されたように、伊良さんも、日本を代表する小説家になる日が来るのかもしれません。2025/03/08
練りようかん
14
初めて会った瞬間から同級生の美しさに魅了された主人公。恋するのは当然の流れに思え、美術部の先輩の一言が決定打に。単語は難しく思索を言語化した言葉と言葉の連なりは密なのだけど、時折ふっと空気が漏れる感じがして、わかるその気持ちわかるその道程となる、端正なのに抜け感がある文章がすごいと思った。友として接し感情を表に出さぬよう偽りの習慣が、花火のキス目撃で無意識に出るシーンの切ないことよ。終盤は死ぬのでは、救われた、いや死ぬのかとハラハラしっぱなしだった。連想することが多かったからか三島作品を読みたくなった。2024/07/20
しじま
9
開始一行目から高二病フルスロットルで爆走し始めたので、おあぁーやっちまった感つよいぃぃ! と唖然呆然で読む。自己の中でぐるぐるぐるぐる恋心をこねくりまわして、勝手に相手を理想化し、勝手に幻滅する若気の至りが生々しい。エッジが利いており、こちらの若気の至りをも抉ってあいたたた。リア高だからこそ書ける文章だろうか。所々何言ってるのかわからなくて、意識を明後日の方向に飛ばさずに読み続けるのは大変だった。でもラストが良かった。落下する間にもグダグダ考えすぎだろとちょっと思ったけど。2024/07/14
チェアー
7
完全な三島オマージュの作品。(そう聞いて読んでみた) 空回りする言葉と現実のギャップがすごい。まったく心に響いてこない。三島とどこが違うのか。もし著者がこの心情を本当に抱いているとしても、心がうまく伝わってこなくて、コメディーを見ているように感じる。 2024/05/26