出版社内容情報
十九年前、私たちは浮くようにそこに居た。実体験を元に描く慈しみの物語。彼らが女を商品のようにしか扱えないのと同じで、私は彼らを子供を産ませる男か身体を買う男に峻別することしかできなかったーー。十九年前の、デリヘル開業前夜の彼らとの記憶に導かれ、私はかつて暮らした歓楽街へ赴く。酷い匂いの青春はやがて、もうすぐ子供が産めなくなる私の、未来への祈りとなる。新たな代表作!
内容説明
もうすぐ子供を産めなくなる私は、恋人と深刻な喧嘩をした翌日、かつて暮らした歓楽街へと赴く。その地に近づくにつれ、デリヘル開業を目指す若者たちと過ごした「十一階の部屋」の記憶が、強烈な匂いを伴って私の脳内に蘇る―。セックス・ドラッグ・バイオレンス+フェミニズムを描いた新境地!
著者等紹介
鈴木涼美[スズキスズミ]
1983年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒。東京大学大学院修士課程修了。小説第一作『ギフテッド』が第167回芥川賞、第二作『グレイスレス』が第168回芥川賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うっちー
64
退廃した世界2023/08/27
道楽モン
40
小説三作目は、まるで平成世代の『限りなく透明に近いブルー』だ。主人公は、19年前に短期間身を寄せていたマンションの一室を回想する。そこに身を寄せる男女のモラトリアムで退廃的な世界こそ、彼らの唯一生息可能なサンクチュアリだ。閉塞した空間と引き伸ばされた時間の中に酒やドラッグやセックスを持ち寄り、感情も躊躇いも無く性交を重ねる。その軽さは生への執着に対する反比例であり、すなわち希望は無い。風俗店での源氏名と身体的特徴でのみ他者を認識する匿名性は関係性への拒絶に等しい。脱出した彼女が掴んだ現在の絶望が哀しい。2023/08/07
ぽてち
37
冷たく乾いた筆致で性風俗界隈に蠢く女性を描き出す鈴木さんの作品は、嫌いじゃないんだが受け止め方がよくわからない。本作は、外資系企業で働くアラフォー女性が、男と別れた直後に19年前の出来事を回想する。マンションの一室でデリヘル開業準備中の男女がひしめく中、部外者であるにも関わらず出入りを黙認されている彼女は、そんな彼らを冷静に観察している。酒や煙草だけではなく薬物もありの環境で、ぶっ飛んだあげくにやられてしまったりもする。タイトルの「浮き身」とは水泳用語だろうか?2024/02/25
bluemint
29
どう読んだら良いのだろう?嫌いな文体ではなく、かなり酷い内容をドライにサラッと書いているので悲惨さはあまり感じない。19年前の水商売から風俗へのギリギリの瀬戸際にいた自分を回想するシーンが心に残る。当時瞬間的に触れ合った風俗嬢たちの行く末を思い遣る場面が、世界は違うが自分の過去を思い起こさせた。どこが良くて、どこが悪いということではなく、全体の雰囲気は悪くなかった。2024/07/13
Tαkαo Sαito
28
「ギフテッド」より個人的に読みやすくて内容もそこまで重くなくて、テーマも興味深くて引き込まれた。「ギフテッド」よりも文章も洗練されてる感じがしてめちゃくちゃ良かった2023/11/19