出版社内容情報
世界に自分しかいないんじゃないかって夜も、そばにいるよ。高校入学前の春休み、セックスワークで生計を立て、ひとりで僕を育ててくれた母が、突然「結婚したい」と言い出した。それを聞いた僕は、元風俗嬢と噂される先生のもとへ……。肌を合わせることは、ときに切実で、ときにかなしく、ときに人を救うのかもしれない。夜のリアルを照らし出す、R18文学賞友近賞受賞作。
内容説明
高校入学を一週間後に控えたある日、これまでセックスワークで生計を立て、ひとりで僕を育ててきてくれた母が、突然「結婚したい」と言い出した。僕は思わず、中学で「元風俗嬢」と噂されていた先生のもとへ向かうが…。「しがみついたり、手放したりしながら、たくさんの折り合いをつけて生きている」大人たちに贈る、共感必至のR‐18小説。
著者等紹介
千加野あい[チカノアイ]
千葉県生まれ千葉県育ち。2019年、第18回「女による女のためのR‐18文学賞」友近賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
402
ニンゲンたるもの、仕事を辞めて失うのは金銭やらやり甲斐やらではなく、まず「他人に必要とされている」という意識なんだそうだ。そんなテーマが全編に盛り込まれている連作短編集。タイトルはもちろん、何から何まで好み。主モチーフは風俗嬢、その息子目線だったり、客だったり、あるいは疲れたときの拠り所であったり。ちょっと複雑に絡まり過ぎの感はあれど、優しい物語だった。再読要。2025/05/14
おしゃべりメガネ
121
なかなか深い作品でした。風俗嬢の母を持った息子の話に始まり、元風俗嬢とウワサされるアンニュイな雰囲気の先生の話、シングルマザーなどの切なる悩みや願いがストレートに綴られています。『R18文学賞友近賞』受賞作家さんではありながら、ただ単にエロさ云々だけじゃなく、むしろいい意味でR18文学賞関連作品とは思えないドラマが展開されています。特にラストを飾る話がなんとも言い様のない切なさに包まれていて、風俗嬢とドライバーのやりとりが絶妙でした。偏見云々ではなく、彼女らのライフスタイルに敬意を表したいと思います。2024/04/09
ベイマックス
113
5つの連作短編集。まずは風俗嬢を母に持つ子の物語。風俗嬢が妊娠してしまう物語。風俗嬢を母に持つ子の成長など。極端に物語られているけれど、人間関係の葛藤は大なり小なりか。◎「職業に貴賤なし」という言葉があるってことは、「貴賤」が実在しているってこと。いじめも過労死なども実在しなくなって死語になったほしい。2023/08/13
machi☺︎︎゛
104
風俗で働く人やその家族、関わりを持つ人たちの連作短編集。どうしても偏見を持たれやすい職業だけど、ちゃんと自分という芯をしっかりと待って、或いはその仕事に自分自身が助けられている人たちが話す内容は全然そんなことなかった。でも親が風俗で働いているのを学校でバラされたり恋人が風俗で働いているのを隠されたりするのはちょっと色々考えちゃうかな。それが一生懸命にシングルで育ててくれる母親を持つ男の子の立場なら余計に複雑だろう。でもその気持ちは大人になった時強みになると思う。2023/09/02
やも
99
性風俗に関わりのある人たちの連作短編集。表面上はなんともなく歩いてるように見えても、人に見せない顔も実はある。表に見せてる顔が全てじゃないね。それを出すか出さないか、誰に見せるかは別として、皆が持ってる顔なのかも。何も語らずに寄り添ってくれる優しさが欲しい。そんなどうしようもなくさみしい夜に誰かが側にいてくれたら。こんな風に優しく人を見たり、接することが出来たらいいな。みんな悩んだり、笑ったり、毎日が浮き沈み。波の中をそれぞれ進んでってるんだよね。矛盾する気持ちに、決めつけない強さや優しさを感じた。2023/09/26