出版社内容情報
これが、僕と君が共にある、唯一の手段――。生きる理の違う美しき人魚と半人前な青年が築いた愛と幸せの形とは。若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。しかし、人魚と人間がともに暮らせる未来があるわけでもなく……。「これ以上のラストはない」と選考委員を唸らせた驚嘆の受賞作。
内容説明
若隠居した大店の跡取り息子・孫一郎は、人魚のおたつに求婚されてしまう。諦めさせるためにも、おたつにねだられるままに御伽話を語る孫一郎だったが、次第にその心は変化していく。しかし、人魚と人間がともに暮らせる未来があるわけでもなく…。生きる理の違う美しき人魚と、半人前な青年が築いた愛と幸せの形。日本ファンタジーノベル大賞2021大賞受賞作。
著者等紹介
藍銅ツバメ[ランドウツバメ]
1995年生まれ。幼少期を大阪、青春を徳島で過ごす。徳島大学総合科学部人間文化学科卒業。ゲンロン大森望SF創作講座、第4期受講生。第4回ゲンロンSF新人賞優秀賞受賞。図書館勤務、図書館司書資格保有。本作で日本ファンタジーノベル大賞2021大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこたん
45
“ねえ、おたつ。お話をしてあげようか。人と人じゃないものが夫婦になる、そんなお話” 人と鯉じゃあ夫婦にはなれないよと、諦めさせるつもりで語る物語を共に聞く。人魚の肉の話にどきり。上半身女の子で腰から下が鯉のようなおたつは、人魚ではないのかと思っていたら、育った後の姿にもっと驚かされた。表紙の雰囲気に騙されてはいけない。異類婚の先に待ち受ける残酷さと哀しみが重くのしかかる。請い願う愛の形が噛み合わない、どうしようもなさ。当事者同士が幸せならばいいのかなと思いつつも、この結末、よく受け入れたなと。うーん強烈。2022/08/11
りー
30
美しくもおぞましく、そして愛しい異種婚姻譚、詰め合わせ。知っている筈のお話もアレンジされて読み心地良い文章で書かれると、とても新鮮な味わい。鯉姫の歯が脳内で視覚化されて怖かった。2022/10/29
とんこ
26
異類婚姻譚ネタでファンタジーノベル大賞受賞作。猿婿、蛇女房、馬婿など人ならざるものとの結婚をテーマにしたお話を、主人公の孫一郎が人魚のおたつに語りきかせながら話がすすんでゆく。出てくる民話に元々好きな話が多かったので面白く読みました。民話自体のストーリーはそこまで変わっておらず、元の話を作者の味付けでという感じ?孫一郎とおたつのストーリーが、淡々としていながらガッツリグロい部分があるのも民話風で良かった。2025/02/26
信兵衛
22
孫一郎とおたつの関係は、ハッピーエンドを迎えることができるのか。いや、これをハッピーエンドということができるのか。 いずれにせよ、異類婚とは通常の結婚の形からはかけ離れたものになる、ということなのでしょう。2022/07/30
鯖
21
若隠居した孫一郎は屋敷の池に棲まう人魚おたつに請われるまま、数多の異類婚姻譚な昔話を語り続ける…という入れ子構造な連作集。異類婚姻譚フェチにとってのバイブルですね。つうか、より暴力に物を言わせるポニョじゃねえかこれ。ポニョはまだマシだったんだなあ、ほえ~ってため息ついちゃった。なんか異類婚姻譚てチョウチンアンコウのオスメスになりがちなところあるよね…。婚姻の形、幸せの形は生きとし生けるものそれぞれ。代理母より先に、日本でも様々な婚姻の形が認められますように。2022/09/02