出版社内容情報
江戸歌舞妓のスター七代目市川團十郎。芸を極め女に翻弄され、絶頂とどん底を繰り返しても甦った波瀾万丈の役者人生を描く時代小説。
内容説明
江戸歌舞妓の若きスター市川團十郎。名だたる役者に認められ、粋な姐さんを妻にして、絶頂きわめたその時に、お上に睨まれ財産没収、江戸追放。あっという間の奈落の底から、見事復活するが、家族の悲劇を招いてしまう…。悪女にはまり欲に負け、泥にまみれた晩年でも、最期まで人々に愛された波瀾万丈の役者人生を初めて描く本格時代小説!松本幸四郎、岩井半四郎、坂東三津五郎、尾上菊五郎、中村歌右衛門ら実在の名優も続々登場。歌舞妓世界の光と影を濃厚に詰め込んだ傑作。
著者等紹介
仁志耕一郎[ニシコウイチロウ]
1955年富山県生まれ。東京造形大学を卒業後、広告会社に勤務。2012年『玉兎の望』で第7回小説現代長編新人賞、『無名の虎』で第4回朝日時代小説大賞を受賞し、作家デビュー。2013年、同二作で第2回歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
106
七代目市川團十郎ほど波乱万丈の生涯を送った歌舞伎役者はいない。十歳で父を失って襲名し、苦労を重ねて人気役者に上り詰め十八番を定めるなどしたが、天保の改革で江戸を追放されたり息子の八代目に失うなど苦難にも直面した。下手な書き手だと現実に振り回されてしまうが、江戸っ子らしい気風の良さと女好きのだらしなさも含め、役者仲間や弾圧側の鳥居耀蔵の素顔まで取り入れて時代を疾風の如く駆け抜ける七代目の大きさを描き出す。また八代目の謎の自殺についても愛憎絡みの思いがけないドラマを展開させ、読者をうならせる力量を見せつける。2022/07/08
pohcho
53
江戸後期の歌舞伎役者、七代目市川團十郎の生涯。尾上菊五郎との確執、歌舞伎界を揺るがす悪女お伝など若い頃の話も興味深かったけど、後半生には驚かされた。天保の改革で財産を没収されて江戸から追放。何年も地方の舞台に立ち、やっと江戸に戻ってこられたと思ったら家族をめぐる悲劇が・・。ボロボロになりながらも舞台に立ち続け、それでも最後まで江戸っ子の心意気を持ち続けた。なんと波瀾万丈でなんと天晴れな人生なんだろうか。九代目の涙の襲名披露が感慨深かった。とても読み応えがあり面白かった。2022/09/06
mitubatigril
11
七代目団十郎の波瀾万丈な人生を描いてある。 きっぷの良い江戸弁に歌舞伎界のしきたりや江戸末期の風俗 映像が思い浮かぶような作品でとても面白く感じた。 現在の団十郎襲名のあれこれを素人目線でそんなに急いで襲名しなくてもとか興行的なこと考えてるだけじゃないかとか勝手に思っていたけれど当人ににしか分からない事もあるよねとかあくまでも小説なんだけど現在と被らせてしまいました。2022/05/30
GOTI
7
☆☆☆☆日経新聞夕刊「目利きが選ぶ三冊」で縄田一男が「仁志耕一郎の最高傑作であるばかりでなく、 今年上半期のベスト作品の一つである・・・」と大絶賛! 数少ない当たりの一冊でした。歌舞伎に造詣深ければもっと面白かったと思います。天才役者、成田屋、七代目市川團十郎の芸と女と業を生々しく描いています。嫁の辰巳芸者おすみ、長崎の妾おさと、大坂の妾お爲、娘おみつ、取り巻く女も凄い。絶頂期に天保の改革により、財産没収、江戸所払いとされ上方へ。見事復活を果たすも家族の悲劇を招く。紆余曲折、波乱万丈の末の大往生! 2022/08/17
りょう
6
こちらで知った本です。江戸末期の歌舞伎事情もわかる六代目市川團十郎(その後海老蔵になる)の話です。その時代のエンタメ事情も面白いです。しかし、江戸って、火事ばっかり!何度も歌舞伎の小屋が焼けちゃう。それに、短命な人が多いのにびっくり。2022/10/12