出版社内容情報
門の向こうへ人々を逃がす“雨乳母”のサチのもとに、少女達が訪ねてきて……。絶望と救済の先を描く「新潮ミステリー大賞」受賞作。
内容説明
顧客の要望に応じて偽りの身分を与える「アリバイ会社」を生業とするサチのもとに、ある日、二人の少女が訪ねてきた。数日後、片方の少女がビルの屋上から身を投げ、サチは残されたデリヘル嬢・アンナを「門」の向こう側へと“逃がす”よう迫られる。サチはこの世界に居場所を失った者を異界へと導く“雨乳母”だったのだ―。なぜ、少女は死んだのか。死の道標を追う過程で浮上した“集団リンチ殺人事件”と少女たちの恩讐渦巻く関係とは。そして、サチの隠された過去とは一体…。壮絶なる騙し合いの果てに、絶後の展開が訪れる。新星による衝撃のデビュー作。第7回新潮ミステリー大賞受賞。
著者等紹介
荻堂顕[オギドウアキラ]
1994年3月25日生まれ。東京都世田谷区成城出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、様々な職業を経験する傍ら執筆活動を続ける。現在は格闘技ジム勤務。2020年、『擬傷の鳥はつかまらない』で第7回新潮ミステリー大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
299
荻堂顕は初読。本書は第7回新潮ミステリー大賞受賞作。文体にはスピード感があり、登場人物たちの設定にもリアリティがある上に、それぞれの者たちが抱える葛藤も物語への推進力を持っている。馳星周を思わせるようなハードボイルド・タッチで物語が進行してゆくのだが、残念ながら途中でそれが崩れてしまう。門と、幸福なパラレルワールドが一気にリアリティを喪失させてしまうのである。もっとも、これがなければ単に馳のエピゴーネンに終わってしまい、この作家の特質を出すことができないのであり、すなわち、このアイディアに頼る限りに⇒2024/11/12
モルク
126
初読み作家さん。身分証を偽造し偽物の身分を与える仕事アリバイ会社を生業としている幸。彼女自身も名前を変え暗い過去を背負っていた。そしてこの世界に居場所を失った人を門の向こう側に逃がす、覚悟を持った失踪を手伝う「雨乳母」も幸の重要な役割だった。門の向こう側に広がる世界、それはかつて自分が望んだ居場所、そこに適応できるかどうかは自己判断。ハードボイルドとファンタジーが混ざったような作品。あまり期待して読んだ訳ではないが(失礼)結構面白く楽しめた。2022/03/04
☆よいこ
91
風俗嬢に偽身分証を用意するアリバイ屋を営むサチの正体は、都市伝説「雨乳母(あめおんば)」だ。新月の夜、世界に絶望した人間を「ここでは無いどこか」に逃がしてくれる。逃亡先は「異世界」2人の少女がサチを頼ってくるが、折り合いがつかず断る。しかしひとりが死に、残されたアンナは再びサチに逃亡を依頼する。サチは風俗店店長と共にサチの過去を探る。▽虐待DV犯罪行為など重い内容。あの時の分岐点で選択を間違えなければ、望む未来を手に入れられたのかもしれない…過去を捨て未来を見るか、過去を飲み込んで今を生きるか。2021/04/29
とろとろ
87
顧客に偽りの身分を与える「アリバイ会社」を生業とする主人公。当然、自身の名前も偽りだった…。う〜ん、この本の命題は行き場を失った若年者の実体か、それともどうにも成らなかった人生の報いか、人生やり直しのよくあるパターンの話か…。これまでの小説のいろいろな題材をできるだけ多く取り混ぜて強引に話を進めていって、最後は主人公の生い立ちの話で落ち着く、みたいな感じかしら。デビュー作ということだが、こんなにたくさんの話題を詰め込むと、これから後の題材に困るのではないのかしら、などと要らぬ心配をしてしまった。2021/11/26
ずっきん
85
第7回新潮ミステリー大賞受賞作。逃がし屋のサチの事務所に駆け込んできた少女たちと、サチの過去の二軸で進行。ちょいハードボイルドな舞台と、ファンタジーな設定がギクシャクしてるけど面白かった。YAという感じではないけれど、米のアレックス賞的な。2021/04/08
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