出版社内容情報
戦場の生死のはざまにこそ、芸の真髄あり――。信長、家康ら戦国武将に対峙し歴史を動かした、流浪の芸能者を描く渾身の時代小説。
内容説明
前関白・近衛前久が「面白き童」と信長に推挙した、踊り手・加賀邦ノ介。妖にも似た魅力をもつ邦ノ介に、信長に忠義を誓う森“乱”成利の心はかき乱される。その胸中を察した明智光秀は、森乱にある取引を持ちかけた。さらに邦ノ介が「上様の念友にしていただきとうございます」と信長に分不相応なことを申し出て…。信長、千宗易、家康ら戦国の猛者に対峙し、歴史を動かした流浪の芸能者の目的とは。
著者等紹介
木下昌輝[キノシタマサキ]
1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞。2014年『宇喜多の捨て嫁』を刊行。同作は2015年に第152回直木賞候補作となり、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞、第2回高校生直木賞を受賞した。2019年『天下一の軽口男』で第7回大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で第7回野村胡堂文学賞2020年『まむし三代記』で第9回日本歴史時代作家協会賞作品賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
168
戦国時代のそうそうたる名の男たちを翻弄して『加賀邦ノ介』なのに私の心は揺れないときめかない。戀・・容姿や才能に嫉妬という心燃やして焦がれ、やがて破滅へ堕ちる。それもまた戀か・・念友(衆道の契り)の話は嫌いではないのに・・木下さんだもの期待して読んだが、本作の誰にも惹かれなかった。邦ノ介の正体が明かされた時はただ啞然とし、どこかで納得する私がいた。それにしても皆さん翻弄され過ぎ。2020/11/21
みっちゃん
165
大好きな木下作品。が、これは私が最も苦手とする分野。どんなに「彼」が妖艶であろうとも、名だたる武将が次々と翻弄され籠絡されていこうとも、その道が深い魂の結びつきであり、高尚な嗜みであると力説されても、いやいや、やっぱり私には無理ムリ、何度も挫折しかけた。が、きっと木下さんだから、最後はまたとんでもない驚きが待っているから!と信じて最後まで頑張った甲斐はあった。なるほど、そうきたか。2021/01/27
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
147
木下さん、最近、精力的に作品出してるけど、玉石混淆って感じにならなければいいのだけれど…。信長、秀吉、家康といった時の権力者を相手に、能や舞いといった幽玄な芸能の世界から妖しく惑わす美童の正体は…。本能寺の変や秀次の切腹等、史実の中でも特に謎の多い出来事に対して、木下さん流の斬新な発想と構想の妙によって、新鮮な感覚で楽しむことができた。それにしても、武士の間では身分を超えた強い結び付きとしての衆道って、結構普通にあったのかな!?2021/04/27
とん大西
146
…妖しい。表紙から読み始めから妖しさ炸裂です。信長、秀吉、千利休-時の権力者をも手玉にとる舞の使い手・加賀邦之介。童ながらも艶かしい容姿、色情を煽る佇まい。妖艶な世界への耽溺、その向こう側に侍る破滅。衆道を切り口にした伝奇ミステリ仕立ては木下さんならでは。が、しかし「黒か白か」…。終盤にかけて押し寄せるシニカルなメッセージ。このへんは今までにないスタイルでちょい斬新。それもこれめ含めて木下さんならでは…と思いつつもやっぱり木下さんのは「まむし三代記」のようなガツンとくるものが読みたいかなぁ…と(^o^;)2020/12/14
のぶ
101
文章がやや硬く、読み難さを感じたが、物語自身は良くできた作品だった。信長、千宗易、家康や信長を慕う森乱ら戦国の猛者を相手に、武将達と謎の芸能者との対峙を描いた連作短編集。謎の芸能者とは、華奢な踊り手の加賀邦ノ介。5つの話が収められているが、どれも主題に能楽や舞を持ってきて、戦国の武将の思いと絡み合わせる。ある意味で異色の戦国物と言えるかもしれない。この本を際立たせているのは、妖しい魅力を持つ加賀邦ノ介。あまり馴染みのない能や舞踏の世界だったが、加賀邦ノ介の舞を読むうちに自分も翻弄された。2020/11/30