出版社内容情報
指揮者はタクトを振るように話し、小説家は心の響きを聴くように書きとめる。東京・ハワイ・スイス……二人だけで語り合った、一年におよぶ奇蹟の協演。
内容説明
小説家はマエストロを聴き尽くす。東京で、世界の様々な場所で、時間を忘れ自由に語り合った一年に及ぶ日々。不世出の指揮者、その煌めく魂に触れる迫真のロング・インタビュー。
目次
第1回 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第三番をめぐって
第2回 カーネギー・ホールのブラームス
第3回 一九六〇年代に起こったこと
第4回 グスタフ・マーラーの音楽をめぐって
第5回 オペラは楽しい
第6回 「決まった教え方があるわけじゃありません。その場その場で考えながらやっているんです」
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイク
145
小澤征爾が好きな人は必読書である。クラシック音楽に興味ある人も読むべき本である。村上春樹は対談の名手である。彼はジャズが好きであることは知っていたが、クラシックにも造詣がこれほど深いとは知らなかった。小澤征爾の指揮者としての才能、活躍振りが対談の中に余すところなく表れている。対談時に彼自身の所有のCDを掛けながら、演奏時の苦労やエピソードを小澤さんから巧みに引き出している。そして2011年の対談なのでそんな昔の話ではない。とにかく小澤征爾の魅力と村上春樹の話術に引き込まれた。皆さんにお薦めの本であった。2016/08/31
おいしゃん
102
対談。等身大の小澤征爾さんのおしゃべりと、村上春樹さんの途轍もないクラシックの知識に、ただただ驚き、新鮮だった。内容のレベルは正直、曲を聴いて題名と作家がわかるくらいのクラシック好きでないとついていけないレベルではあったが、人が趣味について深く楽しく語っている姿は、見ていてやはり楽しい。2016/01/09
風眠
98
音楽家と小説家は似ている。何かを創り上げる事、そこに至るまでの孤独。華やかな表舞台のその裏に、たった一人の闘いがある。自分と闘う事は、誰かと戦うよりもはるかに苦しい。批判も、失敗も、責任も、全て自分で背負わなければならない。自分の敵は常に自分だ。2010年11月から約1年間に及んだ小澤征爾へのインタビューをまとめた本書。インタビューというよりは、分かる分かる!って言い合いながら2人がおしゃべりしてるみたい。一流と呼ばれる人の裏側にある信念と努力。それを分かり合えるのも、根底にあるものが同じだからなのだ。2015/09/13
ねこさん
81
成長や正しい選択に対して、人は義務性を脅迫のように感じることがある。しかし小澤征爾は「あなたとこうして話をしていて、それで気づいたんだけど…」とこの対談中に何度か言っている。自らの選択、そして成長や変化についてマエストロと呼ばれる人が無自覚であるという態度、そして村上春樹の言葉、自分の身体の可動範囲でありながら、それでいて一回性の身体へと投じられているようにも感じられる言葉が、対話の可能性を担保しているのか、緩やかに引き込まれる本だった。マーラーの魅力は難しいが、いくつかの盤を聴き比べてみようと思う。2017/08/27
あすなろ
78
実に愉しい本。この本以上にクラッシック音楽における愉しい本があるのか?楽譜をトコトン読む小澤征爾氏とレコードを数多く聴きまくる村上春樹氏。つまり、一流の指揮者と一流のマニアが一流の文筆活動をしている村上春樹氏の手でその想いを触れ合せる。これ以上何があるか?至福の読書時間となったのは謂わば当然。その他感想や知ったことを書かねばならないのであるが、それは一回の読書で咀嚼するには勿体なく、この本を手元に置いて、また読み返して邂逅しながら紹介されている曲や指揮者・オケによる演奏のCDを耳にしながら愉しむ時に譲ろう2019/06/30