出版社内容情報
闇の中に消えてゆく螢。心の内に焼け落ちる納屋。ユーモアとリリシズムの交錯する青春の出逢い。爽やかな感性と想像力の奏でるメルヘン。新文学の可能性を告げる新作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa
78
近頃は象工場もICT化が著しくて、単純作業の耳づくりを<耳休暇>と呼んでいた頃が嘘みたいだ。機械を監視するだけだから、勤務中にYouTubeで小人の踊りを観られるほどで今や<象休暇>さ。小説家ですら顧客の喜ぶ物語をAIで導き出して複写するだけだから、模造品や模倣品のことばが世界に氾濫してる。納屋ごと焚書したのは僕のせいなのに、何か欠陥があるはずだと原因究明され続けてる。本の不在より、不在を想像することの方が怖い。静寂を破りたいから、そこにことばがあると思いこむのをやめて、そこにことばがないことを忘れるよ。2019/10/05
林 一歩
28
再読。「納屋を焼く」の不条理で不穏な空気感が好きだった。後に『ノルウェイの森』昇華される「蛍」の断片的な情景が切なくて好きだった。 一人称⇒三人称と語り部の視点が変化はしているものの、村上春樹氏の根底的な核(コア)は変わっていないと勝手に解釈しています。2014/04/20
そのとき
18
「三つのドイツ幻想」の冒頭から10行くらいがとっても好き。読後には、ははっ♪と無意識に声を出して笑ってしまった。人の頭の中ってきっと文字にするとこんな感じだよね。脈絡なく、え?何言ってんの?みたいなコアを含みながらだだ流れていく。でもその中に筋が隠れていたり、あるいはいなかったり。この本を読んで感想なんてないよ。好きだというだけ。2019/11/29
erierif
16
『納屋を焼く』すごく良かった。私にもそんな納屋のような物がある気がした。『蛍』もとても良かった。私にとって当たり外れがある作家でこの短編集は当たりだった。特に納屋を焼くには感心したので他の短編集もちゃんと読んでみたい。2019/02/24
再び読書
14
納屋を焼く?一瞬過激な内容にも思えますが、村上春樹氏のいつもの雰囲気、進み方で物語は進行し、あっけなく終わります。