出版社内容情報
湧き上がる気持ちをデジタルで表現するには?この「翻訳」で多様な人が共に在る場をつくる――気鋭の情報学者が新たな可能性を語る。
内容説明
この人が関わると、すべてが輝きだす!気鋭の情報学者がデジタル表現のこれからを語る。
目次
第1章 混じり合う言葉
第2章 デジタルなバグ、身体のバグ
第3章 世界を作る言語
第4章 環世界を表現する
第5章 場をデザインする
第6章 関係性の哲学
第7章 開かれた生命
第8章 対話・共話・メタローグ
第9章 「共に在る」ために
著者等紹介
チェン,ドミニク[チェン,ドミニク] [Chen,Dominique]
1981年生まれ。博士(学際情報学)。NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現コモンスフィア)理事、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、早稲田大学文化構想学部准教授。一貫してテクノロジーと人間の関係性を研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
57
年々、言葉というものに関心を持つ度合いが高くなってきている。毎日、話し聴き、書き読む。その口調・文調から、いろいろなことを感じざるを得ない。ますます、劣化してきていると思う。だからこそ、言葉には注意が必要だし、その世界を広げていくべきだと思う。それが、お互いの間をつなぐことにもなる。2020/06/30
Y2K☮
38
グローバル化とオンライン化の進んだ昨今では、文化や言葉、価値観の違いを痛感させられることが確実に増えている。異なる意見を自動的に排除したり空気を読んでムリに同調したりせず「共話」の可能性を探ろう。己の環世界を外に向けて広げる試みは、内なる壁の打破にも役立つ。著者がどもりを前向きに受け入れたように。幼子はもちろん、AIや微生物に対しても同じ姿勢で接して彼らの意志や自律性に思いを馳せたい(「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」という本を思い出した)。分断と共存を分けるカギは多分その辺り。野党の政治家に勧めたい。2021/02/03
Y2K☮
37
ドラクエ、能、SF、ぬか床、遊牧民。どこからでも材を拾える壁の薄さに学際的探究心を視る。共話と対話の使い分け、メタローグの有効活用は次の創作で実践しよう。自動化よりも自律化。即ち独善的な一方的利用よりも対等な双方向的共生。その方が種として上品でいられそうだ。コミュニケーションの目的をわかりあうことに置くから絶望し、自棄になって世界を分断する。わかりあえない。そこが環世界の壁を溶かす為の出発点なのだ。全体主義や同調圧力とは似て非なる「共に在る」感覚を伸ばし、書店論や新たな書店員の形を小説に落とし込んでみる。2020/05/06
田氏
22
言語を中心にして関係性や共同性について考えを巡らせるエッセイ。土台にはサピア=ウォーフ仮説があり、大きな影響を及ぼしている思想にはグレゴリー・ベイトソンのそれがある。思い出話やハイスペエピソードを交えてのほほんと語り始めたのが、「共話」というコミュニケーションの捉え方が出てきたあたりからだんだんと加速する。話そのものは難しくはない。難しくはないだけに、いま自分の言葉に再翻訳することが至極難しい。「わからない」の方がどんなに気が休まるだろうかと思いながら、翻訳できない「わかりあえなさ」のやり場を探している。2021/07/20
shoko
17
著者が人生を通して形作ってきた「表現」や「コミュニケーション」に関する考えを、娘が生まれたことを契機に再発見する—著者の人生と父娘関係とが相互作用する様を綴った優しい優しいエッセイ集。/著者の文章はフランス語の文章を日本語で読んでいるような、新鮮で懐かしい、不思議な感覚に包まれる文章でした。著者が考察に駆使する哲学・芸術・情報科学等の知見に対して私が明るくないからか、著者の感性に他者性を感じながら読み進めました。それをゆっくり咀嚼する過程でじわじわと魅力を感じる、そんな文章でした。多面的で重層的な一冊。2021/07/06