出版社内容情報
生に無頓着なのに、死と隣り合わせだったあの頃。玉川上水のほとり、武蔵野の美大に集った私たちの青春群像。R-18文学賞受賞作。
内容説明
生に無頓着なのに、死と隣り合わせだったあの頃。あなたと優しい幽霊、古い一軒家、アトリエ、そして玉川上水のほとりの並木道…。あまりにも完璧な、けれどもどこか曖昧な環境での、歪でつかみどころのないストレスに塗れた記憶がよみがえる連作短篇集。
著者等紹介
清水裕貴[シミズユキ]
1984年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学映像学科卒業。写真家。グラフィックデザイナー。2016年三木淳賞受賞。2018年「手さぐりの呼吸」で「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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buchipanda3
103
森のような緑を纏う玉川上水、その付近に住まう美大生などの日常を描いた連作集。日々の暮らしが綴られるのだが、どこか現実を離れた幻めいたふわふわした雰囲気があり、その感じが好みのものだった。都市部の中にある森と水の舞台、そこで生活する美術に関わる人たちのちょっと独特な感覚、その中に見え隠れする繊細な心持ちが興味深い。中でも二人称で語られる篇は、えっ誰がと最初戸惑うも流れに沿っていくとその宙ぶらりんな文体の味わいに病みつきとなった。各篇の人物の繋がりとか密やかな森など自然の切り取りや光の描写も印象に残った。2019/12/09
カノコ
49
深い森の緑、朝霧の白、夜の闇の藍。玉川上水沿いを舞台に綴られる物語は、どこか仄暗い色が印象的なのに、時折差す光の描写が網膜に焼き付くように残る。異国の地で語られるささめごとのような静謐さ。冷徹といっていいほど体温の低い抑制されたうつくしい文章が、この物語によく似合う。生きるひとたちの営みの隙間を縫うように漂浪する意識は幽かで、それが時に悲しくもどかしいけれど、虚しくはない。あなたとわたしの暮らしとベルーガへの恋を描いた、「森のかげから」のある種の諦念とそれが故の清潔さに溺れる。稀有な読み心地だった。2020/02/06
papapapapal
40
R-18文学賞受賞作を含む連続短篇5篇。幽霊ものや金魚ものなど、何とも不思議な世界観。静寂で儚く美しく、どこか千早茜さんの作品を連想させる。受賞作も良かったが、個人的には、美大予備校講師と急死した元生徒を描いた第一話『金色の小部屋』がとても印象に残った。 筆者は美大卒の写真家さんとの事でちょっとググって写真も拝見してみたが、こちらもまた淡く儚く切ない空気感があり独特…小説のイメージとぴったり! 他の作品も読んでみたい。2024/05/16
愛玉子
38
玉川上水という都市の中の森、流れる水の音、深い夜の闇。どこか幻のようなその場所は、生と死のはざまのようで。色彩や形状といった視覚的なものを、静謐な文章に落とし込む独特な感性がとても好みだと思ったが、作者は武蔵美卒で写真家でもあると知って腑に落ちた。R-18文学賞受賞作も直接的な描写はなく、それでいて艶やかな雰囲気を纏っている。流れる時間、生の中に揺蕩う死の気配はしかし人を恐怖させるものではなく、ただそこに、あるがままに。夜の静けさがひたひたと満ちてくるような連作短編集。新作が楽しみな作家さんが増えました。2024/08/08
takaC
16
『海は地下室に眠る』に味をしめて辿り着いた唯一の本。もっと書いてくれると嬉しい。2023/08/25
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