出版社内容情報
罪なくして徳川家を追われ、秀吉の天下統一と朝鮮出兵の暴挙に翻弄されながら屈しなかった男。一生に一度出会えるかどうかの大傑作。その男は決して屈しなかった。人が一生に一度出会えるかどうかの大傑作。徳川家に取り立てられるも、罪なくして徳川家を追われた沢瀬甚五郎は堺、薩摩、博多、呂宋の地を転々とする。海外交易の隆盛、秀吉の天下統一の激動の時代の波に飲まれ、やがて朝鮮出兵の暴挙が甚五郎の身にも襲いかかる。史料の中に埋もれていた実在の人物を掘り起こし、刊行までに九年の歳月を費やした著者最高傑作の誕生。
飯嶋 和一[イイジマ カズイチ]
著・文・その他
内容説明
秀吉の明国と朝鮮への野望は誰にも止められない。小西行長ら秀吉吏僚の隠蔽工作は国と民を泥沼の地獄へと導いていく。沢瀬甚五郎も否応なく渦中に巻き込まれた。
著者等紹介
飯嶋和一[イイジマカズイチ]
1952年、山形県生まれ。1983年『プロミスト・ランド』で小説現代新人賞。1988年『汝ふたたび故郷へ帰れず』で文藝賞。2000年『始祖鳥記』で中山義秀文学賞。2008年『出星前夜』で大佛次郎賞。2016年『狗賓童子の島』で司馬遼太郎賞を受賞。「飯嶋和一にハズレ作なし」と言われ、いずれの著書も高い評価を受け、熱い支持を集めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
185
上下巻、1,100頁超、完読しました。著者が、9年(執筆5年校正4年)かけて書いただけあり、HEAVY級の作品です。沢瀬甚五郎が見た織田・豊臣・徳川三代、日本と朝鮮とアジアと言った感じです。文禄・慶長の役(朝鮮出兵、朝鮮から見たら倭寇or倭乱)のこんなに詳細な作品は初めてでしたが、歴史小説というよりも歴史書のような感じでした。2018/09/05
ケイ
142
舞台は、朝鮮へ。秀吉が引き揚げた後、現地に残された人達がたくさんいたという事実は衝撃的だった。作者は調べあげて書いたのはよく分かるが、何かを書くためには取捨選択が、切り捨てる事が必要ではなかったのかと思う。作者が、勝頼対徳川の頃から朝鮮出兵とその後を書くために、甚五郎が必要だったのだろう。史実を知らなくても楽しめた『黄金旅風』や『雷電』とは違い、作者が調べあげた出来事を消化する読書となってしまった感がある。2018/11/04
初美マリン
118
元家康の嫡男信康の小姓の甚五郎を縦糸に秀吉の朝鮮出兵を横糸にして、朝鮮出兵の無意味さと悲劇を克明に表した大作。最後に旧友の幸くあれという言葉が心に残る2020/05/27
のぶ
88
上巻では国内各地の戦乱が中心だったが、やがて秀吉が天下を統一し舞台は西国へ移っていった。沢瀬甚五郎は商いを行うべく、堺、薩摩、博多、フィリピンの地を転々とする。秀吉は明国と朝鮮への野望を持ち出兵の命を出す。甚五郎も渦中に巻き込まれていった。下巻では朝鮮への出兵にページの多くが割かれ、現地での戦が細かく描写されていた。自分は歴史では知っていた出兵の詳細を知る事が出来とても勉強になった。この時代を舞台にした歴史小説の大作としては堂々とした大作であり、出会う事が出来て良かったと思える一冊だった。2018/08/14
NAO
70
この作品では、朝鮮出兵の発端から終幕までが詳細に記されている。妄想でしかない秀吉の朝鮮出兵を止められる者が誰一人おらず、秀吉の威光を恐れわが身を守るためには嘘をつくしかなく、その嘘がさらなる嘘を積み重ねることとなった。嘘を土台にしているがために、どうにも収拾をつけられなくなってしまった戦は、無益という言葉で表すにはあまりにも悲惨を極めていた。そのあまりにも常軌を逸した戦を冷静に見続けることができる者としては、主君を失い、流れ者になった「社会の外にいる者」である沢瀬甚五郎しかいなかったのだろうか。2018/11/13