出版社内容情報
ティーン誌の編集者である禄と、雑誌を愛読する中学生の郁美。ある日投げかけた言葉が、二人の人生を交差させて――。心を打つ長篇。
内容説明
ティーン誌の編集者の禄は読者からのお悩み相談ページを担当しているが、かつての投稿者との間にトラブルを抱えていた。一方、地方に暮らす中学生の郁美はその雑誌の愛読者。東京からの転校生が現れたことで、親友との関係が変わり始めてしまう。出会うはずのない二人の人生が交差する時、明かされる意外な真実とは―。
著者等紹介
奥田亜希子[オクダアキコ]
1983年愛知県生まれ。愛知大学文学部哲学科卒業。2013年「左目に映る星」(「アナザープラネット」を改題)で第37回すばる文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
186
奥田さん作品5冊目です。それぞれの作品で、意外?と深いテーマをさりげなく扱い、サラッと書き綴る作風はストレスなく、キレイな仕上がりになってますが、本作も同様でした。本作もあるテーマを扱い、中盤以降でグイグイとせめてくる展開に読む手が止まらなくなりました。ちょっともどかしくも感じるトコもなくはないですが、コレはコレでありなのかなと。あるティーン雑誌を手がけるスタッフとそのアシスタントとの関わりに気づけば興味深々となってしまいます。奥田さんの作品、救いがないようで、どこか小さな救いがあるトコに惹かれます。2018/07/20
ゆみねこ
81
ローティーン向け編集者の禄と、愛読者の少女・郁美。お悩み相談ページで二人が繋がる。多感な中学生たちと、生真面目に向き合う「ろく兄」。傷付き傷つけられ、許し許されて、だんだん大人になっていく彼女たち。こういう本を読むと、はるか彼方になった自身の少女時代に想いを馳せることが出来ますね。2018/08/26
えりこんぐ
78
長野に暮らす女子中学生と、中学生雑誌を作る編集部が交互に描かれる。繋がりが見えてきたかなと思ったらもう一段階驚きがあって面白かった。中学生...えらい遠くに来てしまったけども、その頃の気持ちは忘れられない。否定する側される側、ハッとする言葉ですね。郁美のように、自分の否を認めて行動に移す事は難しいので頑張ったねって言ってあげたい。しかしろく兄はそんなに魅力ないかな? 穏やかってすごくいいじゃん!とオバさんになったら良くわかる( ´ ▽ ` )2018/03/16
ででんでん
71
奥田さんは好きな作家さん。学校という世界でもがき、生き抜かなくてはならない中学生くらいの女の子の大変さって、生きやすい?おばちゃんになった私からは想像もつかないのかもしれないなあ。無理をしていたとしても楽に泳げるように見える子もいれば、溺れてしまいそうな子もいる。ちょっと見方を変えてひっくり返し(reverse)、やり直す(rebirth)ことが、いつでも誰でもできる社会であるように、そしてその可能性を伝えられる大人でありたい。2018/02/17
おかだ
68
なんか波長が合う感じがする、大好きな作家さん。この作品も自分の奥底に静かに沈む記憶とリンクして、とても響いた。ローティーンファッション誌の編集者・ろく兄と、地方の女子中学生読者・郁美の物語が交互に紡がれていく。中学生の頃とか、謝れないまま離れてしまったり、行き違ったまま投げ出した友達関係って誰しもひとつはあるんじゃないか。そうやって通り過ぎた人の顔が浮かぶ。とっくに塞がったと思ってた傷がチクンと痛むような物語だった。傷つけて傷つけられた過去はどんどん遠くなる。そうやって大人になり、みんな前に進んでいく。2018/09/15