内容説明
人は常に、何物かの犠牲たり。破局を予感しながら、なお懸命に日本を祈り続けた保田与重郎。その精神の源泉をたどり、今も失われぬ文章の美の本質に迫る。
目次
第1部 浪曼的滑走(恍視;回想;滑走;不吉な精神;恋愛の形而上学;『ヱルテルは何故死んだか』;犠牲)
第2部 保田与重郎論(言霊の運命;畸人について;古典の論―芭蕉;肉声としての日本;敗戦期;占領下のたたかひ;ロマノ・ヴルピッタ『不敗の条件』について;違和と同一性―K・M・ドオク氏の日本浪曼派論;二つの万葉論)
感想・レビュー
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ダイキ
3
『保田與重郎』と共に、読んで良かったと心から思える本でした。桶谷氏の保田論は他とは違って、ドイツ・ロマン派を安直に引き合いに出してこない所が本当に御立派だと思います。保田は橋川文三によって完全に論破された等と宣っている者がツイッターに居ましたが、桶谷氏がその事を聞けば唖然とされるでしょうね「透谷を明治の精神における最も早い時の「犠牲」といつた保田與重郎は、新しい日本の橋、昭和における日本文化の世界構想を古典論から考へつつ、その橋のための「犠牲」とならうとした。その犠牲を「偉大なる敗北」といつたのである。」2015/12/17