出版社内容情報
この過去から逃げ切れば、すべてはノスタルジアになる――。書き換えられた記録によって隠された歴史的真実が、今ここに立ちあがる!
書き換えられた「過去」に隠された「真実」が日本を、世界を震撼させる! エッグは記録に残してはいけないスポーツなの――。まさか東京オリンピックが中止になるなんて! 書き残された言葉が歴史に接続されたとき、そこは劇場になる。待望の「エッグ」再演&パリ公演を機に、美輪明宏の愛と人生に、長崎に刻まれた記憶と昭和の時代を浮かびあがらせた傑作「MIWA」とともに贈る、新たな代表作!
内容説明
改装中の劇場で発見された寺山修司の幻の原稿。読み進めるうちに、なんと東京オリンピックが中止に!(「エッグ」)。今を生きている実在の人物の生涯を描くという、演劇史上、例を見ない挑戦。美輪明宏は、かくも化け物なり。(「MIWA」)。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
16
言葉遊びが起こすイマジネーションが時空を超える刺激が、そもそもの野田秀樹の舞台のおもしろさだった。夢の遊眠社を解散し、やがて野田は、社会的な問題を戯曲に盛り込むようになる。その転機は、『パンドラの鐘』、続く『カノン』辺りからだろう。『パンドラの鐘』で長崎への原爆投下、『カノン』では連合赤軍事件といったように、野田の関心は近現代史そのものに向いていく。『エッグ』も例に漏れない。謎のスポーツ「エッグ」と歌姫の恋を描きながら、ジェンダーや国威発揚の問題を経て、この戯曲は731部隊へと行き着く。(つづく)2015/02/04
いのふみ
7
月並みながら、場面の転換・接続が鮮やかで、テンポのよさを感じた。また、セリフも思わず喋ってみたくなる。それは、実際に観たからだろうか、「MIWA」の方でより感じた。2017/08/31
やまねっと
6
「エッグ」「MIWA」ともに劇場に観に行っているが、改めて芝居の内容を全く覚えていない。今回戯曲を読んだけど、やはり野田秀樹の芝居は生で観ないといけないが、テキストとして戯曲も読まねばなと思いました。言葉遊びとかはこんな言い回しだったのかとか目に止まる。 あとがきにもあるが、生きる、死ぬ、の話をこの戯曲集に纏めている。 色々あるが、各戯曲の前半のように生きていきたい、楽しくね。2022/03/27
法水
4
『エッグ』は現在パリ公演中の再演版を収録。初演時にはまだ決まっていなかった2020年の東京オリンピックに絡めた改変がいくつか(後で初演時の戯曲と読み比べてみよう)。野田さん自身、再演してよかったとおっしゃっていたし、評判もいいようなので今から4月の大阪公演が楽しみ。『MIWA』は美輪明宏さんの半生を扱ってはいるが、もちろんただの伝記モノではない。終盤、「生きていてつらいことなんてなかったでしょう?」と聞かれ、「あるわけないでしょう」と答えるMIWAに凄みを感じる。2015/03/05
doji
2
自由に交差するイメージとことば、ユーモアは上品でも下品でもウィットを失うことがなく、作品世界の奥行きを広げ、テーマを複層的に観客へと提示していく。幸いにも「エッグ」の公演を観ることができたのだけれど、テキストでもそのすばらしさは健在で、それでも舞台の凄まじさを改めて思い出させた。「MIWA」も同じく、ユーモアとモチーフ使いがほんとうにすばらしい。また舞台を見たい。2017/01/02