出版社内容情報
描きたいんだよ、おれが見てきた江戸の、あの本物の青空を――。ゴッホも愛した〈青の浮世絵師〉、歌川広重の遅咲き人生!
内容説明
武家に生まれた歌川広重は浮世絵師を志す。しかし、彼が描く美人画は「色気がない」、役者絵は「似ていない」と酷評ばかり。葛飾北斎と歌川国貞が人気を博するなか、鳴かず飛ばずの貧乏暮らしに甘んじていた広重だが、ある日舶来の高価な顔料「ベロ藍」に出会い―。日本の美を発見した名所絵で歴史に名を残す、浮世絵師の生涯!
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。フリーライターとして活動するかたわら小説を執筆。2005(平成17)年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。2008年「一朝の夢」で松本清張賞を受賞。2016年『ヨイ豊』で直木賞候補、歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
258
梶 よう子は、新作中心に読んでいる作家です。歌川広重は知っていましたが、その物語は初読です。ぶるう(ベロ藍)に拘り江戸を粋に描いた絵師の人生を著者は見事に書き切りました。 https://www.shinchosha.co.jp/book/336854/2022/08/27
パトラッシュ
195
わがままで浪費家で家族に苦労させるが、腕は確かで人情に厚いため周囲がかまってしまう。困った芸術家気質の歌川広重がプルシアンブルーの紺青に魅せられ、優れた名所絵を生み出して大人気の浮世絵師として活躍する物語を、その絵を思わせる鮮やかさで描いていく。そんな広重に振り回されながら豊国や北斎ら同業者、版元の保永堂や栄久堂、妻子や弟子も彼の筆を放っておけない。いわば光り輝く広重を中心とした19世紀前半の江戸画壇に関わる人びとが、天保の改革や天災火災に遭いながら逞しく生きるドラマが面白くて一気読みさせられてしまった。2022/06/30
いつでも母さん
186
『眼前に広がる風景に絵師がそこになにを求めるかで、風景の様相が変わる。雪、雨、風、昼と夜ー。時の流れ』自分の中に湧き上がる衝動・・江戸を描きたい。あぁ、良い作品を読んだ。その名は歌川広重!【東海道五十三次】に【名所江戸百景】きっと一度は目にしたことがあるはずの浮世絵師だ。人間・歌川広重を梶さんが面白く読ませてくれた。2022/06/23
昼寝ねこ
184
『東海道五拾三次』『名所江戸百景』の絵師、歌川広重の一代記。広重はかなり破天荒な人物で口は悪いが情に厚い江戸っ子そのものだった。武士だったとは知らなかった。そして彼の二人の妻や弟子たち、北斎や国芳国貞など絵師たち、喜三郎や保永堂など版元たち、彫師刷師、幼馴染の武左衛門、それら江戸に生きる人々の姿が生き生きと描かれ、さながら江戸の町にいるかのようだった。広重の好きだった藍色の空の下に広重の好きだった江戸の町が広がっていた。終盤は災害で崩れた江戸の町を錦絵で甦らせようと奮闘して命をすり減らした広重に涙した。2024/12/23
trazom
165
歌川広重を描いた小説。江戸の火消同心・安藤重右衛門が、当時、役者絵や美人画に比べて一段下に見られていた風景画によって、名所絵というジャンルを確立する様子が生き生きと描かれている。タイトルは、広重ブルーとして有名なベロ藍。ベロ藍の鮮やかさとぼかし摺りを生かした「東海道五十三次」(保永堂版)が大ヒットしたのは40歳近く。長い間の苦しい生活を支えた妻や弟子たちの優しさが、物語の救いでもある。同時代の国貞(三代目豊国)、国芳、北斎との関係や、絵師と版元や摺師などとの力関係など、浮世絵をめぐる世相もよくわかる。2022/09/02