出版社内容情報
二度と江戸の土は踏めぬ――。家康の孫娘として後水尾天皇に嫁ぎ、緊迫状態が続く幕府と朝廷の融和に全力を尽くした波乱万丈の人生。
内容説明
秀忠の五女・和子は、大坂夏の陣以来いまだ緊迫する朝幕関係の架け橋となるために、後水尾天皇に嫁ぐ。だが、後水尾は天皇家と公家の行動を管理し、政治的主導権を掌握する幕府に怒りを覚えていた。和子がようやく皇子を儲け、家康以来の将軍家の宿願が果たされるかと思えた矢先、皇子は早世してしまう。悲嘆にくれた後水尾は、紫衣事件をめぐる幕府への憤怒が収まらぬなか、ある決心をする。天皇家と将軍家の対立を超え、世の安泰に全身全霊を捧げた波乱万丈の生涯に迫る。
著者等紹介
梓澤要[アズサワカナメ]
1953(昭和28)年静岡県生れ。明治大学文学部卒業。1993(平成5)年、『喜娘』で第一八回歴史文学賞を受賞しデビュー。歴史に対する知的な洞察とドラマ性で、本格派の歴史作家として評価されてきた。執筆の傍ら、東洋大学大学院で仏教史を学ぶ。2017年、『荒仏師運慶』で第二三回中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
初美マリン
118
徳川の血を天皇家に入れるという大きな重圧を一人の少女に背負わせて。それでも公武合体のために生き抜いた、もって生まれた天分もあろうが、よくぞ潰されず生きたと思う。みんなつらかったのだろうが。彼女について読んだことがなかったから味わい深くしっとり読めました。2021/08/10
のぶ
88
徳川家康の孫にして、秀忠の五女として生まれた和子(まさこ)の生涯を綴った物語。その波乱万丈の人生を読んで、心打たれるものがあった。和子は幼くして後水尾天皇に嫁ぐ。天皇家の跡継ぎを熱望され、子供を出産するが上二人は女児、三、四人目で男児にめぐまれるが早世してしまい、その後男の子を生む事はなかった。後水尾天皇は譲位する。その後も後水尾上皇を支え続けた人生だった。周囲の人物の死や京を襲う大火等、とにかくいろいろな出来事が起こった時代で、そんな中、強く生きた一生を梓澤さんは丁寧に描いていた。良くできた時代小説。2021/06/02
万葉語り
48
御水尾天皇のもとに嫁いだ秀忠の娘、和子の一生。名前を変え、居所を変え、生活習慣を変え、それでも闊達な性格だけは変わらず、幕府と朝廷の間で苦労しながらも自分らしく生きた女性だった。レジリエンスを持った人だと思った。2021-0802021/07/10
星落秋風五丈原
40
天皇家に嫁いだ家康の孫娘で秀忠とお江与の五女として生まれた和子の生涯というと、先に出た宮尾登美子の『東福門院和子の涙』が有名である。その時は和子の侍女視点でとことん虐められた主人をいたわしく思う様子が描かれた。『東福門院和子の涙』が書かれたのは1990年、平成の世である。さて、令和に書かれた彼女はもう少し前向きなキャラクターになっていた。二度の落城を経験した母親、大阪夏の陣で母親のような目にあった姉千姫、偶に悲劇の主人公扱いされる忠長や三代将軍になる家光も、あまり悲観的ではない。2021/05/31
sofia
37
『阿茶』『江 姫たちの戦国』を読み、徳川秀忠五女として後水尾天皇に嫁いだ東福門院和子の話を読む。朝廷と徳川の間で天性の純粋さと努力で力強く生きた女性。後水尾上皇との仲もよかったよう。小説というフィクションと歴史が混ざってはいるものの、こうであったと思わせる読みものであり、こうであったと思いたい。国母としては一条天皇の中宮彰子のような強さか。実は宮尾登美子の『東福門院和子の涙』下巻をまだ読んでいない。いじめられての「涙」なら、こちらの『華の譜』のほうがいい。2023/08/01