出版社内容情報
風景とは。記憶とは。来世とは。震災後の私達の心に寄り添い同時代芸術の核心に迫る批評。
風景とは何か。記憶とは、来世とは何か。同時代芸術の核心に迫る、アクチュアルで野心的な批評集。ジャン=リュック・ゴダール、チェルフィッチュ、アルヴァ・ノト、飴屋法水、ジョナス・メカス、吉増剛造、クリント・イーストウッド―。映画、演劇、音楽、写真など、さまざまな分野の作品が生まれる場所に立ち、震災後の著者の、そして私たちの心の動きに寄り添いながら、芸術表現のありようを凝視し思索する12の論考。
内容説明
風景とは何か。記憶とは、来世とは何か。映画、演劇、音楽、写真など、同時代のさまざまな分野の作品が生まれる場所に立ち、震災後のわたしたちの心の動きに寄り添いながら芸術表現の核心に迫る、12の論考。同時代芸術を凝視し思索する、アクチュアルで野心的な批評集。
目次
ほとんど無限そのものとしての有限について
歴史について
見事なまでに成立しないタイム・パラドックスについて
前世と現世と後世と余生について
HERE AFTERについて
風景について
そこにはいないひとについて(ここにはいないひとについて)
ユリシーズとパランプセストについて
音楽の外について
そこにいるもうひとりについて
時間と空間について
終わりについて
批評について―あとがきにかえて
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
6
佐々木敦の原理志向もいよいよ極まった感じがあるというか、「時間とは?」「空間とは」「藝術とは?」「死とは?」といった根源的なクエスチョンがいくつも秘められた連作批評集。『ゴダール・ソシアリズム』鑑賞から導かれた「美は、藝術の敵である」という断言はとても刺激的。外部への目配せなどせず、美を含むあらゆる枠を超えようとする途方もない試みが藝術だということ。そして、表現された「なにか」の後に続かざるを得ない批評という営みも、同じような途方もなさを目指すべきだということ。強い倫理性に基づいた批評への意思表明。2016/10/25
aoneko
3
句点が少なくて読みづらいけど、一つひとつの考察に奥行きがあるので読み応えはあり。映画、演劇、写真、音楽等、敢えて文学以外の芸術作品に向き合い、風景とは、来世とは、時間、空間とはといった概念にアプローチしていく様は作者のフィルタがかかっているだけに、確かに「限りなくフィクチョンに近いもの」ともとれる。批評とはあくまで副次的な存在であり、表現ではないが創造ではあり得る、よって批評は批評のままで一篇の虚構としても成立し得る、の話や「ヒア・アフター」を例にした考察になるほどなあと。2013/02/22
バーニング
2
意欲的な一冊。あくまでも主眼は作品論ではなく表現論なんだということに着目して読むとより楽しめる。というのは出てくる作品はリアルタイムのものが多いし、演劇や映画など必ずしも簡単には網羅できないものが多いから。ただその分、より「現在」の在処に忠実なようにも思える。2012/11/14
カツェ
1
連載中は読むのを投げ出してしまったが、まとめて読むとイケる。誠実でアクチュアル、生真面目でみっともない。曰くいいがたい装幀も中身にジャスト。私小説のようにも読める。2014/04/02
hiratax
1
写真から演劇まで、興味の範囲が幅広い。あとがきで種明かしがされているが本書は文芸誌連載ながら「文学」は取り上げず、周辺領域をフォローする。震災から一年後に、影響をアウトプットする小演劇の観劇レポートを網羅的に記述する描写は圧巻。彼は触れている分母の数が凄まじい。すべてが面白いわけではないが、すべてに触れようとする欲望には感嘆する。ジャンルもリリース数も膨れ上がった音楽にはほとんど興味を失っているという告白にも驚く。各章で文体を変える試みもあるが、あまりうまくいっていないように見える。2013/07/28