出版社内容情報
自分には、愛されるだけの価値がない。そう考える39歳未婚の紫麻の前に、風変わりな男が現れて……。恋愛の、最初の光が差しこむ瞬間を細密に描く長編。
内容説明
自分には、愛される価値がない。ずっとそう思ってきた39歳の紫麻。恋の最初の光が差し込む瞬間をあざやかに描く長編。
著者等紹介
木村紅美[キムラクミ]
1976年兵庫県生まれ。親の転勤に伴い、福岡県、千葉県などに住む。小学校六年生から宮城県仙代市で育ち、現在の実家は岩手県盛岡市。明治学院大学文学部芸術学科卒。書店アルバイト、会社員を経て、2006年「風化する女」で第102回文學界新人賞を受賞、デビュー。2008年「月食の日」が第139回芥川賞候補に。日常を細やかに描く目線と登場人物の心に寄り添う文章で人気を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
lonesome
23
「でも、迷惑のような気がして。一方的に押しつけるのは……」。自分も紫麻さんと思考回路が似ているところがあるので、こんなふうにストレートに言葉にして相手に気持ちを伝えられないでウジウジ考えすぎる人を重い、怖いと感じる人が多いだろうなと思って他の人の感想を読むのが怖い。紫麻さんの妹の杏里のように社交的で自分の気持ちをまっすぐ外に出せる人がまわりから愛されたり異性にモテるのはよくわかるし憧れもするけれど、自分は紫麻さんを応援したい。だってカルナヴァルと宿泊客を大切に思う気持ちはプロフェッショナルだ。2016/07/22
なゆ
22
鄙びた海辺にある、ホテル・カルナヴァル。小さなホテルを営む日々の物語も素敵なのだけど、どちらかといえば恋愛小説…いや、片思い小説という感じか。恋に不器用なアラフォー長女紫麻の、ややこしい片思い。静かに浮足立ったり、妄想にふけったり、幻滅したり、見守ったり。恋をしてるのに甘い場面はなく、むしろシュンとさせられる。それでもめげない紫麻の強さ。うまくいかなすぎる所が結構リアルで、でもラストにはかすかに希望も見えて、すごくいい余韻が残る。弱さも情けなさも包み込む優しさと穏やかさにあふれた作品。2012/01/19
PAO
21
まあなんとゆっくりした小説ですこと…。この頃刺激が強い本が多かったのでちょうどよい息抜きになりました。紅美さんの作品を読むのは二冊目なのですが独特の時間の流れを感じます。手紙による時間差のあるコミュニケーションがその流れをさらに逆加速させます。まるで現代の時の流れはこんなに速くなくてもよいのではないでしょうか?と静かに主張しているかの様です。お互い前に進むのを躊躇する男女の関係とも呼べない関係がじれったくもなにか懐かしく感じました。それは私たちが便利さと引き換えに無くしてしまった何かなのかも知れません…。2018/06/07
糸巻
21
家族経営の海辺のホテルが舞台で39歳独身の長女・紫麻が主人公。真面目で内気だけど誰よりもホテルの事、家族の事を考えてる紫麻に好感が持てる。ホテルの話とは言え宿泊客にはさほどスポットを当てておらず、終始紫麻の心に寄り添いながら物語が展開するので地味だけどとても穏やかだ。要領が良く自分とは正反対の妹と比べて少し落ち込んだり、好きな相手に気持ちを伝えることに臆病になったり…共感の持てるポイントが多い。最後まで派手なことはないがプレゼントの中身が思いがけないものでちょっと苦笑い。2018/05/02
れいぽ
19
可愛らしい装丁とタイトルに魅かれて手にした一冊。帯は何とほむりんが担当!(笑)「主人公は内気な人。内気な人は心の画素数が高いんじゃないか。」主人公の紫麻さんは確かに内気な人でしたね…^^;「海まで徒歩1分。朝食はバスケットに入れてドアの前までお持ちします」ホテル・カルナヴァルに泊まってみたい!39歳の日常を書いているのは淡々としていて好みなのだけど、無理に恋愛を絡ませなくてもよかったかな。仕事や家族の話だけで十分面白いのに。だって紫麻さん、茅野さんってダメンズだよー。出てくるたびにイラッとしたわー^^; 2012/05/07




