出版社内容情報
残忍な殺人犯を生んで育てたのは母性か女性か社会か。昭和54年大阪、猟銃を持って銀行に侵入し、四人を殺害して立て籠もった花川清史は香川からヘリで駆け付けた母の説得を拒絶し、射殺された。事件解決後、新聞記者は犯人の生涯を掘り起こし、母は問い直し、愛人は振り返る。『ホテルローヤル』『家族じまい』などで親子、愛憎を描いてきた著者がその究極に迫る長篇小説。
【目次】
内容説明
昭和54年大阪、その男は銀行内で4人を殺し、説得に駆け付けた母との会話を拒絶した。自身の最期が見えてきたとき、男は語った。「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」『ホテルローヤル』『家族じまい』などで親と子、人を描きつづけてきた著者がその究極に挑み、真実に迫る長篇小説。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965(昭和40)年、北海道釧路市生まれ。2002(平成14)年「雪虫」でオール讀物新人賞、2013(平成25)年『ラブレス』で島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で直木賞、2020(令和2)年『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
181
三菱銀行人質強殺事件の犯人梅川昭美は、貧家に生まれ勉強は苦手だがプライドだけは人一倍高いなどヒトラーに重なると以前から感じていた。しかし戦争で兵士として生き方を学んだヒトラーに対し、ミナミの最下層でもがき続けた梅川は「自分はこんなはずではない」という社会への怒りを蓄積していった。本書はそんな危うさに惹かれる気性の母親と愛人が、典型的なダメンズとウォーカーの関係が固まってしまった姿を小説として描き出す。自己評価の高い現実逃避の男と助けたい症候群の女の組み合わせは、男を焦らせ破滅させる結末しかもたらさないか。2026/05/17
いつでも母さん
150
桜木紫乃、どうしてもこの事件を基に描きたかったのか?何を?犯人を?生い立ちを?母を?社会を?「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」これだけじゃ真相はわからない。銀行内で4人を殺し立てこもりの末、射殺された犯人・花川清史30歳。犯人の人生を追う新聞記者の近藤と、清史と同じ年の海原将志。彼らの追いかける先に何がみえるのか、母親と恋人・亜紀の想いも苦しいがそこに救いはない。母だけが味方と言うには犠牲者が浮かばれない。だが、この空気感は紛れもなく桜木紫乃なんだなぁ。2026/05/25
fwhd8325
85
犯人である清史よりも、母と愛人。この2人を通しての犯人像が描かれています。個人的には、事件の場面も読みたいと感じました。母親の愛情は、この事件より少し前に起きた「大久保清」の事件を思い出しました。残酷な事件は今も起きています。清史が、なぜ事件を起こしたのかは、藪の中にあるように感じます。事件の残虐性を考えると、やや物足りなさを感じてしまう。2026/06/14
ゆみねこ
79
昭和54年三菱銀行立て籠り事件をモチーフにしたフィクション。事件の報道は覚えている。粗暴な男が銃を持って銀行に立て籠り警察官や行員を殺害、老母の説得にも耳を貸さずに狙撃されて死亡。書中では花川清史、彼がなぜ凶行に走ったのか?その30年の人生と関わった母や同棲していたホステスの証言をもとにその人生を掘り下げる新聞記者たち。団塊の世代生まれ、無知と貧困と承認欲求がこの男を作り上げたのだろうか?読み応えはあったが、終始重たく辛い読書になった。2026/05/25
ナミのママ
73
著者の新作は昭和54年「三菱銀行人質事件」をモデルにしている。現場で射殺された花川清史30歳とはどんな人物だったか。事件を追う新聞記者、母親、8年間暮らした女性が自分の過去と重ねていく。作者は母に焦点を当てたかったようだが、時代も環境も考え方もあまりに違いすぎて読み進めるだけで終わってしまった。むしろ一緒に暮らした亜紀の生き方が強烈に印象に残り、これから先どうなっていくのかとても気になる。許されることのできない犯人だが、どこで歪んでしまったのか。昭和という時代の狂乱が背景から影のようにのしかかってくる。2026/04/30
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