出版社内容情報
西域に咲く幻の桜、時空に消えた殺意……。京大裏の喫茶店で、御手洗潔が語る物語は謎を孕み、人生の光と影を照らし出す。甘美で数奇な四篇のミステリー。
内容説明
時は一九七四年、京都大学医学部に在籍していた御手洗潔は、毎日、午後三時に、進々堂に現れた。その御手洗を慕って、同じ時刻に来るサトルという予備校生がいた。放浪の長い旅から帰ったばかりの御手洗は、世界の片隅で目撃した光景を、静かに話し始める…。砂漠の都市と京都を結ぶ幻の桜、曼珠沙華に秘められた悲しき絆、閉ざされた扉の奇跡、そして、チンザノ・コークハイの甘く残酷な記憶…。芳醇な語りが、人生の光と影を照らし出す物語。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年、広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃的なデビューを飾る。著書は、小説からエッセイ、ノンフィクションまで幅広い。「島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」を主宰するなど新人発掘にも尽力している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たか
54
世界一周という長い旅から帰ったばかりの御手洗潔は、在籍していた京都大学近くの喫茶店『進々堂』に毎日現れては、異国で出会った人々の話しを、予備校生・サトルと語り合っていた-。▼ 学生時代の御手洗潔(京大医学部だったとは!)や、地元では知る人ぞ知る『進々堂』(かつての京大生の御用達)に惹かれて、手に取った。 御手洗潔ファンには、新たな一面が知れて嬉しかったが、ジャンル的にはミステリという訳ではなく、特に『進々堂』が舞台でなければならない理由もなく、更には語り手が御手洗潔である必要もないような気がした。C評価2022/09/24
やっちゃん
44
これまでの御手洗シリーズとずいぶん毛色が違う。語り手が潔本人だしそもそも旅の話でミステリではない。この浪人生が羨ましい。潔の話が面白くていつまでも聞いていたくなる。深夜特急みたいに潔の放浪記も書いて欲しいです。2023/06/07
yumiha
41
読友さんから教えていただいた「進々堂が出てくる御手洗潔シリーズ」で検索したら、京都市立図書館では本書がhitした。でも…進々堂も京都もとば口だけ。話の主な舞台は、日本海に面したS市、イギリス、東京、ウィグル自治区やん😢しかもミステリーとちゃうやん😢御手洗氏も『斜め屋敷の犯罪』の風変わりなキャラクターではなく、誠実でマトモなタイプとして描かれていたので物足りなかった。「戻り橋と悲願花」など次々と戦時中の朝鮮人差別の酷さが続くので、ウッと息詰まる。でも、全く思いがけないラストに少し救われた。ありがとう。2022/12/10
藤月はな(灯れ松明の火)
39
探偵ではなかった御手洗君が京大へ在学していた時に旅した場所で出会った人々と偏見の目と世界についての物語。「叫びと祈り」を読んだ時と同じようにまるでその場所を旅したかのような思いに囚われました。私達は本によって世界を旅することもできるのだと感じます。「戻り橋と悲願花」は朝鮮の姉弟の日本での惨い現実に悲しくなりましたがあの花の行方に驚くと共に無性に泣きたくなりました。「記憶のカシュガル」は国の人間としての誇りに美しい桜を連想しました。後記で作者が東日本大震災の追悼を述べていて胸を突かれます。2011/06/23
そうたそ
36
★★★☆☆ 物語としては面白いけど、ミステリを期待して読むとガッカリするだろう。帯にミステリを匂わせる文章が書いてあるのはさすがに詐欺だと思う。御手洗が登場するからそれなりの内容を期待してしまうからねえ。ただミステリではないのだが、物語としては読ませるものになっている。中でも学習障害の青年が重量挙げに挑戦する話には胸を打たれたし、風船爆弾と朝鮮人の子たちの話には過酷な現実・差別に胸が痛んだ。曼珠沙華が咲き誇る場面が目に浮かぶのが印象的だった。それにしても若い時の御手洗は案内普通の人だったんだな。2014/01/04
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